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【社会】タクシー業界希望の光に 派遣切り受け皿、採用3倍増の社も

2008/12/24

 景気後退で失業者が相次ぐ中、非正規だった労働者がタクシー業界に「正規」としての職を求めるケースが増えている。採用を前年の2-3倍に増やすタクシー会社も出ている。

 「元気アイチを求めて来たのに…」。埼玉県から2年前に越してきて、愛知県三河地方のトヨタ系下請け会社で派遣社員として働いていた男性(47)=名古屋市瑞穂区=は11月中旬、突然、契約更新しないと言われた。同月末までに寮を出なければならなくなり、寮のある名鉄交通(名古屋市中川区)に応募した。昼夜を問わない仕事だが正社員の安定した身分が魅力で、就職を決めた。

 既に同社で運転手として研修している大阪府出身の男性(40)=岐阜県多治見市=は、親の介護のため昨年9月、愛知県内の機械部品メーカーで夜間の派遣社員として働き始めた。今年に入って派遣の仲間が減り始め、自身も「11月末まで」と宣告された。「3年は働けると思っていたのに」。自分は企業の安全弁かと悩んだ。運転手は「定年後も働けるのが魅力。給料の額より、正社員として働き続けられれば住宅ローンも返せる」。

 エムケイ(京都市)が全国で3・3倍の雇用増を発表し、雇用対策を打ち出したが、名古屋地区のタクシー会社も自動車など製造業の元期間従業員や元派遣社員の事実上の「受け皿」として機能し始めている。

 名鉄交通は4月から11月まで前年同期比2・7倍の133人の運転手を採用。運転手の平均年齢は50代後半、今後も団塊の世代の定年退職が続く。4年前から年間約100人規模で退職しているが、これまでは製造業に流れ、人材が集まらなかった。同社担当者は「力を入れても集まらなかったのが、9月以降、県内の製造業に就いていた若い世代が増えました」。雇用の余力はまだあるという。

 市内のほかのタクシー会社も「今年の採用は前年の2-3倍。ここ数年で一番多い」。増員分が売り上げにつながるかどうかについて「高齢化に伴ってタクシー需要が見込めるだろうが、ふたを開けてみないと分からない」と話す。

(中日新聞)

シミュレーターを使って接客などの研修を受ける新人ドライバー=名古屋市瑞穂区の名鉄交通で
シミュレーターを使って接客などの研修を受ける新人ドライバー=名古屋市瑞穂区の名鉄交通で