2015/06/22
不在時にカバー 努力評価の仕組みも
育児や介護などで時間的制約のある社員が増える中で、同じ業務を複数人で補完し合いながら担当するチーム制(ペア制)が、一部の企業で導入されている。女性が働きやすい職場にしたり、組織の対応力を高めたりする利点がある。 (稲熊美樹)
◇ ◇ ◇
「子どもの学校や保育園の行事に気兼ねなく参加でき、感謝の気持ちでいっぱいです」
IT企業「トヨタコミュニケーションシステム」(名古屋市東区)総務・人事部で、人事グループに所属する川瀬香織さん(41)は話す。入社20年目。2人の子を育てながら働く。
人事グループでは昨年4月から、短時間勤務者とフルタイム勤務者がペアを組んで仕事をするペア制を取り入れた。それぞれが主担当業務を持ちながら、ペア相手の業務もカバーする。
川瀬さんの主担当は、従業員約1200人の勤務状況管理。このほか、ペアとなったフルタイム勤務者が主担当の企画業務も行う。「繁忙期には子どもが突然病気になったらどうしようと不安だったが、ペア制導入後は気兼ねなく休めるようになった」という。
導入にあたり、人事グループマネジャーの山中正人さん(36)は、負担増が予想されたフルタイム勤務者には特に丁寧に意義を説明した。始めてみると、「フルタイム勤務者は同僚から感謝され、気持ちよく働ける職場になっています」。今のところ人事グループだけが取り入れているが、今後は他の部署にも取り組みを紹介していくという。
チーム制導入で役割分担することは、時間的制約のある社員のやりがいにもつながっている。
大日本印刷(東京都新宿区)は、社を挙げて働き方を変えていこうと、各部署でペア制やチーム制を導入した。情報ソリューション事業部で営業を担当する課では、顧客の主担当者のほかに、チームで対応できる体制を整えている。
営業担当者が不在のときにも顧客からの要望に応じられるよう、緊急連絡先の一覧表を作成しデータを共有。データファイル名称の統一化なども実施した。
同課の荒井直子さん(32)は、育児休業から復職して2年間は短時間勤務だったが、今年4月から原則残業なしのフルタイム勤務に復帰。課員に若手が多いため、ペアとなった若手に仕事を教える立場になった。課内で欠かせない役割を分担しており、「時間は短くても、やれる仕事がある」と自信を感じているという。
繁忙期などに残業が必要となる職場では一般に、短時間勤務者は「同僚に申し訳ない」と思い、逆にフルタイム勤務者は「短時間勤務者の分までカバーしているのに」と不満を感じてしまうことが多い。意識の差をそのまま放置すると、職場の雰囲気がギスギスしがちだ。大日本印刷はチーム制導入と同時に、チーム制をうまく運用しているかどうかを、個人の評価項目に入れている。
短時間勤務者のマネジメントに詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティング女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室の矢島洋子室長は、「フルタイム勤務者が不満や不公平感を感じる原因は、短時間勤務者のカバーをすること自体ではなく、自分の頑張りが評価されないこと。きちんと評価の仕組みを整えることが大事」と指摘する。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから