2008/12/24
技と誇り 1本に凝縮
冬到来で、おでんや鍋料理がおいしい季節。凝縮された魚のうま味を一度に楽しめるちくわは、欠かせない具だ。豊橋といえばやっぱりちくわ。老舗の「ヤマサちくわ」(豊橋市下地町)でこの道五十六年の技術顧問、堀田正勝さん(71)から作り方を教わった。
白い制服と長靴、帽子に着替え、実演販売などをしている「ちくわの里」(豊川市豊が丘町)へ。材料は白身魚のシログチやレンコダイなどを配合した柔らかなすり身だ。刃渡り約三十センチの出刃を器用に使い、堀田さんがまな板に広げる。厚さ数ミリに伸ばすと、右手の出刃でまな板からはがし、左手に持った竹棒を回しながら巻き付けていく。
「あぁ、難しそう」。すり身が見た目より重い。両手を添えた出刃で何とか広げ、厚さをそろえようとするが表面は凸凹のまま。難所の巻き付けでは左手の竹棒を気にすれば、右手の出刃が進まず…反対もしかり。左右違う動きに慣れない。グッと出刃を押し進めると、身を巻き付けた竹棒が浮き出て外れそうになった。堀田さんが手を添え、何とか形にできたが、真上から見ると竹棒が中心にない。肉の厚みに偏りが出てしまった。
焼き台では、軍手をはめた堀田さんが場所によって違う火の強弱を見極め、ちくわの場所を変えていく。「強いと水分が飛ぶ。弱いと長くかかって皮が固くなる」。堀田さんのように目を配ろうと思うが熱さで目が乾く。
そして七分。堀田さん作のちくわはふっくらきつね色で、真っすぐだ。一方、私作の例のちくわは色は良いが、とっくりのようにくびれてどこか不細工に。「ちくわ作りも奥が深いでしょ」。一本のちくわに、職人の技術と誇りがしっかりと詰まっていると実感した。(世古紘子)
【メモ】勤務時間は8時間で週休2日。大卒で約20万円。豊橋市下地町の本社工場では製造部の職人150人が1日20万本のちくわを製造。新入社員は材料の魚切りから、ちくわ焼きまで全工程を経験する。豊川市門前町の「竹の和」では、予約制で手焼きちくわ作りができる(12月-2月初旬は休み)。
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