2015/06/12
労働組合や野党側が反対する労働者派遣法改正案。「一生、派遣労働者」という人が増えるほか、正社員の仕事が派遣に置き換えられるとの懸念が出ている。(我那覇圭)
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Q 改正案の内容は。
A 現在は最長3年となっている企業の派遣労働者受け入れ期間の制限を実質的に撤廃することが柱だ。企業が労働組合から意見を聞き、働く人を交代させれば、派遣労働者をずっと同じ職場で使えるようになる。今は、通訳や秘書など専門的な知識や技術が必要とされる「専門26業務」は無期限で雇えるが、その区分もなくす。
Q 何が問題なのか。
A 企業側は同じ職場にずっと派遣労働者を雇うことができるようになるので、製造業の現場などで派遣の固定化が進むと指摘されている。さらに、人件費を抑えたい企業側が正社員を派遣に切り替えることも心配されている。逆に専門業務で働く人は、3年で辞めなければならなくなる。
Q 改正する必要はあるの。
A 政府は派遣労働者が3年ごとにいろいろな職場で経験を積み、キャリアアップにつながると説明する。これまで不安定だった派遣労働者の雇用も安定すると説明している。
Q 具体策は。
A 改正案に雇用の安定化策が入った。具体的には派遣会社に対し、3年を迎えた労働者のために受け入れ企業に直接雇用を求める▽派遣会社でずっと雇用する▽労働者に新しい派遣先を紹介する▽これら以外で雇用安定の対策を取る-のいずれか一つを実施する義務を盛り込んだ。受け入れ企業の側には、正社員募集の情報を提供することなどを義務付ける。
Q それでも労働者側は反対している。
A 政府は雇用が安定すると主張するが、その通りになるとは限らない。なぜなら、派遣会社にとって、受け入れ企業は顧客。直接雇用を強く頼めるかは分からない。派遣会社が無期雇用しても、派遣という働き方は変わらない。受け入れ企業が正社員募集の情報を提供しても、採用につながる保証はない。
政府が改正案の成立を急ぐのは、経営側の強い意向が働いているからだ。このことからも、労働者より企業側にメリットのある法改正だといえる。
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◆与党、きょうの採決提案 衆院委
衆院厚生労働委員会の渡辺博道委員長(自民)は11日午後の理事会で、企業が派遣労働者を受け入れられる期間の上限を実質的に撤廃する労働者派遣法改正案の質疑を12日で終えることを職権で決めた。与党の自民、公明両党は同日中の採決を提案したが、民主、共産などの野党は強く反発している。採決すれば自民、公明の賛成多数で可決され、来週にも衆院を通過する見通しだ。
与党は、派遣労働者の雇用安定につながるとして成立を急ぐが、民主党などは派遣の固定化につながるとして強く反対しており、採決を強行すれば与野党の対立が深まるのは避けられない。民主、共産、社民、生活の野党四党の国対委員長は11日会談し、厚労委員会の開催と採決に一致して反対する方針を確認した。
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