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【社会】労災受給者の解雇「可能」

2015/06/09

最高裁初判断 療養中の元職員訴訟

 専修大が、労災認定されて休職中だった男性職員(40)を解雇した手続きの適否が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は八日、「病気やけがで休職中の労働者の療養費を、使用者ではなく、国が労災保険で負担している場合も解雇できる」との初判断を示した。

 解雇を無効とした二審判決を破棄した上で、解雇権乱用の有無を審理する必要があるとして東京高裁に差し戻した。

 労災の傷病年金の支給対象となる失明など重度障害の労働者に限っては、使用者が解雇できると定められているが、それ以外のケースは明確な規定がなかった。解雇可能な対象を広げた判断といえ、男性職員側は「治療に専念して復職する権利が奪われる」と批判している。

 労働基準法は、業務上のけがや病気などで療養中に解雇することを原則禁じる一方、雇用主が療養費を負担して3年たっても治らない場合、賃金1200日分の「打ち切り補償」を支払えば解雇できると規定している。専大は男性職員の療養費を補償せず、国が労災保険法に基づき給付金を支払っていた。焦点は、このケースに規定を適用できるかどうかだった。

 最高裁判決は「労災給付は、使用者による補償に代わる制度であり、使用者の義務はそれによって実質的に果たされている」との解釈を示した。

    ◇

◆「復職の権利奪う」
◆原告男性、不満あらわ

 「一生懸命リハビリに励んだのに、就業を拒否し解雇した大学の対応を最高裁が認めたのは、非常に悔しい。最高裁は労働者から復職の権利を奪った」。判決後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見した原告男性は不満をあらわにした。

 男性は1997年に専修大に就職。2002年から激しい肩凝りに悩み始め、首や腕などに痛みが出る「頸肩腕(けいけんわん)症候群」と診断された。いったん復職したが再び悪化。06年から働けなくなった。短時間業務なら可能とする主治医の診断書を基にリハビリを兼ねた軽い業務での復帰を求めたが、大学側に拒否され、11年10月に解雇された。

 代理人の小部(こべ)正治弁護士は「安心して療養する権利を奪う判決だ。原告一人の問題ではない。経営者は自宅療養中の労働者に『金を払うから辞めろ』と言いだすだろう」と危機感をあらわにした。