2015/06/08
主に製造業界で仕事をする技術系派遣の人たちが近年増えている。特殊技能があるだけに人材派遣の中では比較的高所得だが、技能のレベルアップが個人任せの派遣会社が多い。今国会に提出されている労働者派遣法の改正案には、体系的な教育訓練などの実施義務を強化する内容が盛り込まれており、独自の教育カリキュラムを作っている派遣会社もある。
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群馬県内に住む男性(51)は、同じ派遣先企業で通算16年間、特定の電子機器製品の設計の仕事を続けている。35歳の時、以前に勤めていた会社を辞めた。正社員の技術職を探したが見つからず、首都圏の人材派遣会社に登録。この会社に派遣された。
派遣会社との契約は半年更新で、年収は400万円ほど。「年齢的に正社員への転職は難しいのではと思っている」と話す。
仕事内容もずっと同じため、自分の技能に不安を覚えることも。派遣先企業の技術革新についていけなければ、契約を打ち切られても不思議ではない。現行の労働者派遣法では、教育訓練の機会確保が派遣会社に義務づけられているが、男性が登録する会社に技能向上のための支援はない。
ソフトウエア開発の勉強もしたことがあるが技術を身に付けるには、実践の現場と年単位の時間がいると痛感。「これからどんな技術が必要か、個人で探して習得するのは難しい」と漏らす。
3月に発表された厚生労働省の労働者派遣事業報告書(2014年)によると、事務系や日雇いなども含む派遣労働者数は252万人。うち技術系派遣労働者数は約19万6000人おり、前年度より1万5000人ほど増えた。19万人の半数近くが有期雇用だ。
一方、派遣技術者のレベルアップが不可欠として、独自の教育カリキュラムを作ったのが、技術系派遣大手のメイテック(東京都港区)だ。
同社は今春、299人を新規採用。正社員として雇用し、家電や自動車、機械などの大手に設計開発の技術者として派遣する。
同社は、派遣先企業の技術革新に対応するため、多彩な研修制度を設け、社員の技能アップを目指す。例えば電子回路設計なら、スマートフォンや大型家電、エンジン制御部品の開発を、経験豊かな現役技術者から学べる。
システム開発専門の村瀬聡一さん(45)は、これまでにプログラミングや画像処理技術など20の資格を取得。企業のデータベースの構築などでリーダーの役割を果たす。「社内の研修や技術者同士の勉強会に参加し、将来のキャリアを描きながら、幅広い技能の習得に努めています」
派遣労働に詳しいニッセイ基礎研究所(東京都千代田区)の松浦民恵主任研究員は「幅広く技能を磨く努力は、若いうちから始めた方が効果的。同じ派遣先で業務を続けているだけでは、十分なキャリア形成ができない懸念がある。自助努力に任せず、派遣業界や行政の取り組みが欠かせない」と話す。
一方、従来一つの派遣先への派遣期間の制限がなかった技術系派遣で、有期雇用労働者の場合は他の業務と同じ一律3年に制限される内容も改正案に盛り込まれた。同じ派遣先で長期間働いてきた派遣労働者の雇い止めが多発するとの懸念が広がっている。
(林勝)
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