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【くらし】書面なし・パワハラ・求人情報ウソ ブラックバイトの特徴は

2015/06/01

 学業と両立できないほど理不尽な労働を学生に強いるブラックバイト。求人情報で見抜くことは難しく、働き始めて「こんなはずでは」と後悔する学生が少なくない。大学生らの労働組合ブラックバイトユニオン(東京)に寄せられた実例をもとに、具体的な問題点と早く気付くポイントを、ユニオンの坂倉昇平さん(31)に指摘してもらった。

 ◇ ◇ ◇

 「時給1000円以上。賄い食付き(無料)。交通費支給」。東京都内の女子短大生(20)は昨年10月、インターネットの求人サイトで見つけた飲食店ホールスタッフのアルバイトに応募。面接を経て、すぐにバイトを始めた。

 初日、店に行くと、店長から調理場の仕事をするよう指示された。「調理なんて、やったことないからできません」と言ったものの、「1から教えるから大丈夫」と言いくるめられた。

 以前のバイト先ではもらえた労働条件の書かれた書面は、今回はもらえなかった。社員に尋ねると「店長を信じないのか」とはぐらかされた。

 労働基準法はアルバイトでも賃金や業務内容、就業場所などの労働条件を書面で明示し、交付することを雇用者に義務付けている。求人内容と契約内容が違ったり、書面を渡さなかったりするのはブラックの可能性が高い。特に契約書がないと、経営者の裁量で何をされるか分からない。

 バイト時間は決まっていたが、客の入りによって突然早上がりを命じられたり、8時間休憩なしで働かされる日も。慣れない調理の仕事に、社員からは「本当に使えないやつだな」と怒鳴られっぱなし。怒られないように、深夜に調理の練習を自宅でしたため、心身ともにくたくたに。バイトの翌日は、1時限目の授業に出られなくなった。

 パワハラで精神的に追い詰めるのは危険信号。学生であることを尊重せず、使い捨ての安価な労働力としかみていない証拠。

 苦労が報われると思った1カ月後のバイト代振込日。渡された給与明細に、目が点になった。時給は900円、交通費はゼロ。賄い食を食べた日は食事代として500円が天引きされていた。店長に聞くと、「研修期間は時給900円」と強く言われた。研修期間があることを初めて知った。

 説明のないまま、研修期間を設けたり、求人より時給を下げるのは違法。給与は全額を支払うことが義務付けられており、賄い食代金の天引きも違法。早上がりやシフトの急な変更など会社の都合で働く時間が短くなった場合は、通常勤務した場合の平均賃金の六割以上の手当(休業補償)を支払う義務がある。

 「こんなバイト続けていられない」と、女子短大生は1カ月で辞め、別のバイト仲間とユニオンに相談。未払い賃金2万7000円を団体交渉で会社に請求し、全額を受け取った。給与明細などの証拠が違法性を指摘する決め手となった。

 後でトラブルになったときのために、募集案内の紙やタイムカードの写真、労働時間を記入した手帳などの証拠を残しておくことを勧める。

◆必ず契約書請求を

 書面での明示が義務付けられている労働条件は、雇用期間と就業場所、従事させる業務の種類、始業・終業時刻、休憩時間、休日、賃金など。

 弁護士らでつくるブラック企業対策プロジェクトが、全国の学生約3千6000人に実施したアンケートでは、3割が労働条件を記した書面を渡されておらず、その8割が何らかの不当な扱いを受けたと回答。ユニオンの坂倉さんは「働く前には、まず契約内容をしっかり確認することが身を守る」と指摘する。

 (山本真嗣)

女子短大生が自分の手帳にメモしたバイト時間の記録。賃金の支払いを求めた団体交渉で役立った=東京都内で
女子短大生が自分の手帳にメモしたバイト時間の記録。賃金の支払いを求めた団体交渉で役立った=東京都内で