中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【経済】家計支出13カ月連続減 実質賃金マイナス続く 円安、負担増に拍車

2015/05/30

 総務省が29日に発表した4月の家計調査(2人以上世帯)で、1世帯あたりの消費支出が物価変動を除く実質で13カ月連続の減少となった。消費税増税前の駆け込み需要の反動で大きく落ち込んだ昨年4月の水準を下回った。買い物意欲の低迷は続いている。(須藤恵里、白山泉)

 家計調査では、金額が大きい「住居」が前年同月比20・6%減となった。契約から引き渡しまで時間がかかり「昨年の駆け込み需要が4月までずれ込んだ」(担当者)が、5月以降も企業に回復の手応えはないという。リフォームも「期待していたほど回復してこない」(全国展開のリフォーム会社)。消費税増税後に売上高が前年の6割程度になる企業もあった。

 ホームセンターを運営するカインズ(埼玉県本庄市)は「高額な商品が多く8%の消費税は大きなハードルになっている」(広報担当)。増税分を負担し価格を据え置くなどキャンペーンで懸命にアピールし、リフォームの販売は前年並みを維持している状態だ。

 消費が伸びないのは円安の影響が大きい。原材料費の上昇で食料品や衣服などの値上げが続出。「企業も値上げに対する抵抗感が小さくなっている」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏)。外国為替市場では1時1ドル=124円台まで円安が進み、今後も「原材料価格上昇の転嫁は進む」(同)とみられる。

 給与明細上の賃金は増えているが、物価上昇の影響を除く実質賃金は23カ月連続でマイナス。これでは消費の意欲は減退する。

 日銀は「賃上げを実感するのは、給与明細でボーナスアップを確認する6~7月」(幹部)と消費回復を期待する。だが、斎藤氏は「賃金は期待するほど伸びておらず実質賃金のマイナスはしばらく続く」と指摘。消費に力強さが戻るには時間がかかるとみている。

【実質賃金】 労働の対価として得る額面上の給与が「名目賃金」。「実質賃金」は物価の影響を考慮して、実際にどれだけのモノが買えるかを示す。賃金が変わらず物価が上昇した場合や、賃金の上昇以上に物価が上がった場合は、給与で買えるモノやサービスが減るため、実質賃金は減少となる。