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【愛知】認定補聴器技能者「聞こえる」 笑顔のため

2015/04/20

天あま野の 慎しん介すけさん(33)

 「補聴器をつけたくない。からかわれるから」。難聴の子供がぽつりと漏らすのを耳にしたのがきっかけだった。

 機器らしくない補聴器にするにはどうしたらいいか-。きらきら装飾がはやっていたこともあり、アクリル絵の具や模造宝石の粒で、ネイルアートのように飾る「デコ補聴器」を生み出した。4年前のことだ。

 4歳から90代までの幅広い層に受け、今では50人以上に愛用されている。中には男性も。「補聴器のマイナスのイメージを減らせたのがうれしい」

 大学卒業後、1度はゴルフ関連会社に就職した。学生時代にゴルフ部員だったためだ。一通りの仕事を覚えた9年前、補聴器販売会社を営む父から「帰ってこい」と言われた。「父が起こした会社を継ぐんだという漠然とした考えだけだった」。耳の聞こえにくい人を助けたいという使命感はなく、補聴器にも興味はなかった。

 だが、そんな考えは仕事を通じて変わっていった。聞こえの状態や、どのような時に必要なのかは、個々人で違う。丁寧に調整することで生活が送りやすくなったり、家族との会話が増えたりして、笑顔が増していく。「ありがとうの言葉をいただくため、自分のできることをやろうという思いが強くなった」

 補聴器調整の知識や技術を認定する民間資格「認定補聴器技能者」を4年前に取得。愛知県岡崎市の補聴器販売会社「あいち補聴器センター」を経営しながら、新製品の情報収集などを欠かさない。

 補聴器は、高額なものから手頃なものまで種類が多い。利用者の多くが高齢者で、今後も需要が増していくと思われ、1人1人の要望に合った機器を提供したいと願っている。

 「すべては『聞こえ』のために」。入社間もないころ、会社の理念として打ち出した言葉だ。父が、客のために時間をかけて調整やメンテナンスに取り組んでいる姿勢を見て、頭に浮かんだ。その言葉を胸に日々、顧客と向き合う。
(佐橋大)

イメージを変えたいと作ったデコ補聴器の見本を見せる天野慎介さん=愛知県岡崎市で
イメージを変えたいと作ったデコ補聴器の見本を見せる天野慎介さん=愛知県岡崎市で