2015/04/13
職場で撮影、背景に重要書類…
職場に持ち込んだスマートフォンやタブレット端末から会員制交流サイト(SNS)に写真を投稿した結果、思わぬ情報漏えいが起きている。仲間内での会話感覚でSNSに慣れ親しんでいる新入社員は特に要注意だ。(寺本康弘)
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机の上に無造作に置かれた赤いペンと菓子の写真に、「(飲み物のせいで)おなかがぐるぐるなってますわ」の文字。1月末、スマートフォンで撮影した1枚の写真が短文投稿サイト「ツイッター」に載った。一見、何の問題もなさそうだが、机の上に広げた書類には、企業の名と数字が並んでいた。
企業が市に提出する固定資産税の償却資産申告書で、第3者が見ることはできない秘匿すべき企業情報だった。ツイッターのアドレスが添付された匿名のメールが、市に届いて発覚した。投稿したのは兵庫県姫路市の職員(19)。入庁1年目だった。
市人事課の調査によると、職員は資産税課に配属されており、残業中に自分の机の上を撮影。帰宅後に投稿した。ツイッターは友人に誘われて昨年10月から始めた。「安易な気持ちで投稿した。知らない人が私のツイッターを見ているなんて思わなかった」と話したという。職員は戒告処分、直属の上司は口頭注意を受けた。同市は今年から、新入職員に対して「勤務時間中に投稿しない」などの指導を始めた。
企業や学校で、インターネットの安全な利用について講演しているコンサルティング会社「NIT情報技術推進ネットワーク」(兵庫県三木市)代表の篠原嘉一さんによると、SNSにはさまざまな職場内の画像などが投稿されており、問題が起きそうなものも含まれている。
看護師の投稿に患者のカルテが写っていたり、教員の投稿にテストの問題が入っていたり。画像だけでなく、顧客をバカにする言葉や上司の悪口を書き込んで、結果的に企業の信用を落とす例もある。
「これまでの情報管理は、専門の担当者が勉強していれば良かったが、SNSが身近になった今では、1人1人が情報管理の重大さを理解していないと問題に発展する」と指摘する。情報漏えいを防ぐため、何が個人や企業の秘密情報で、何が不適切な投稿なのか、みんなが理解できるような研修が必要になるという。
個人でSNSを使う際の具体的な対策として▽SNSの機能にある公開範囲設定を知り合い以外に広げない▽勤務先もできれば掲載しない-ことを勧める。投稿内容から、営業方針や開発中の新製品が推測されることや、公務員であれば関係業者の接触を招く恐れもあるためだ。
さらに一歩進めて、「普段はSNSを利用していない上司でも、積極的に使って部下とつながると良い」と指摘する。仮に情報漏えいにつながる投稿があっても、問題になる前に指摘し、削除できるためだ。一度、ネット上で話題になると、他のサイトへの転載が繰り返され、削除が困難になる。「ただ上司からのSNSでの接触を、部下の若者が歓迎するかは別の問題ですが…」
若者にとって、なくてはならないSNS。今後も情報漏えいの危険は高まるばかりだ。篠原さんは「リスクを知らないで利用するのが最も怖い。リスクを把握した上で、楽しんで利用してほしい」と話す。
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