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【地域経済】豊田自動織機 手製装置で負担減

2015/04/07

50歳以上・女性も軽々専用ライン

 豊田自動織機(愛知県刈谷市)が、「高年齢者」と呼ばれる50歳以上の熟練工や女性に無理なく働いてもらおうと、負担を減らした生産ラインづくりに力を入れている。背景には少子高齢化や女性の活躍推進があり、トヨタ自動車グループ各社も同様の取り組みを進めている。(太田鉄弥)

 ◇ ◇ ◇

 エンジンを生産する碧南工場(同県碧南市)の「高年齢者・女性活躍ライン」。ハンドルを軽く操作するだけで、重さ8キロのクランクシャフトが容易にエンジンに取り付けられる。これまではクレーンでつり下げて、傷つけないように慎重な操作が必要だった。ばねやてこの力を応用した「からくり」と呼ばれる手製のアイデア装置のおかげで、組み立て作業が肉体的だけでなく精神的にも楽になったという。

 2012年に立ち上がったこのラインでは、8人で1日約20台の発電機用エンジンを組み立てている。うち50歳以上の男性が2人、育児中で時短勤務の女性も2人いる。友延(とものぶ)潤一組長(51)は「若いときよりも疲れがたまりやすい。腕を肩より上げるだけでつらかったので、助かる」と喜ぶ。

 からくりづくりの中心となってきた野村剛一班長(41)は「高年齢者と女性の要望は似ていた。少し背伸びする動作だけでも1日繰り返せばつらい。無理な姿勢をせず、重い物を軽く運べる工夫を徹底してきた」と話し、他の工場にも同様の取り組みを広げている。

 豊田織機で生産現場を担当する技能系社員8300人のうち、50歳以上の高年齢者は15%、女性は4%。25年には高年齢者が30%を超えると予想し、対策を検討してきた。技能伝承も狙いで、花本正明管理・育成グループ長(55)は「ベテランに無理なく長く働いてもらい、熟練の技や経験を若手に伝えてもらいたい」と期待する。

 トヨタ自動車も、技能系社員に占める50歳以上の割合が現状の25%弱から、25年には30%を超えると予想し、13年ごろから作業スピードを落としたラインを上郷工場(同県豊田市)のエンジン組み付けラインなどに導入。有能な指導者は再雇用後も月収を維持するといった待遇面の改善も検討している。アイシン精機(刈谷市)も高年齢者や女性に負担の少ない職場づくりに力を入れている。

豊田自動織機・碧南工場にある「高年齢者・女性活躍ライン」。女性従業員でも、からくり装置のおかげで鋼鉄製部品「クランクシャフト」を簡単にエンジンに組み付けられる=愛知県碧南市で
豊田自動織機・碧南工場にある「高年齢者・女性活躍ライン」。女性従業員でも、からくり装置のおかげで鋼鉄製部品「クランクシャフト」を簡単にエンジンに組み付けられる=愛知県碧南市で