2015/04/03
夫の「手伝う立場」脱却を
子育てと仕事を両立させるため、夫婦対象のセミナーが花盛りだ。しかし、男性は「自分は手伝う立場」との意識が抜けないことが多い。ブラザー工業(名古屋市)労働組合は「子育ては夫婦2人の仕事」と考えてもらおうと、男性社員対象のセミナーに、妻の参加を求めた。他社勤務や専業主婦でも参加でき、3月末の初回には男性社員11人と妻5人が集まった。 (福沢英里)
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同労組は男性社員が育児に積極的に関われるよう、これまでも「イクメンセミナー」などを開催。子育てと仕事の両立に向け、夫婦で産後の生活について考えてもらおうと、初めて妻の参加を呼びかけた。講師は産前産後をサポートする会社「アイナロハ」(埼玉県所沢市)代表で、本紙生活面に「オトコの母親学級」を連載中の渡辺大地さん(34)。セミナーは市内の研修施設で開かれ、夫婦など十六人が参加し、夫婦間の協力について話し合った。
渡辺さんは、絵本「パパとにんのこども」(ひくまの出版)の読み聞かせから始めた。10人の子を1人で育てる父親が主人公。子育てに奮闘するが、ある日突然、祖母に子どもを託して旅に出る。読み聞かせの後、グループごとに父親のいいところと改善すべきところを出し合った。
父親が1人で子育てを頑張る様子に共感する意見が大半を占めた。意見が分かれたのは、1人旅に出た場面。男性側からは「リフレッシュの時間を確保している」という肯定的な意見が出たが、女性側は「子どもを置いていくのは考えられない」「もっと違った休暇の取り方があったのでは」などと厳しい意見も。
渡辺さんは夫婦共働きをする上で、子育てや仕事に対する責任感や考え方が男女で違うことを強調。「違いがあることを前提に話し合えば理解も進む」と、夫婦会議の時間を持つことを勧めた。
渡辺さん自身、子どもが生まれてから「夫婦の会話とは、子どものことを話せばいいと思っていた」。会話が減ったことを妻が悩んでいたのにも気付かず、「妻の産後の状態、復職時のストレスや苦労を分かち合い、話し合うべきだった」と振り返る。
セミナーでは、産後女性の状態を男性に考えてもらう場も設けた。渡辺さんは「産後は体力、気力とも低下する。トイレの電気を消す、ごみはごみ箱に捨てるなど、日々のささいなことも夫に言いづらい。妻がやってほしいのは実は家事ではないのかもしれない。妻の状況に寄り添って」と理解を求めた。
参加した垣ケ原(かきがはら)豊さん(36)は、別の会社に勤める妻が今月末に次男の育休明けで復職する。朝の子どもの支度や保育所への送りなどを担う予定という。「父親が育児の当事者意識をもっと持たなければ」と話していた。
育休後コンサルタントの山口理栄さんは「仕事熱心な男性社員の意識改革が必要」と話す。出産後の妻は意識も働き方も大きく変わるが、子どもができても夫は「終電でしか帰れない」と主張する。そんな男性の説得が実は難しい。「最初は子どもの迎えの時間に間に合わなくても、帰宅の目標時間を決めて段階的に帰宅を早めたり、残業を朝に回したり。夫婦でよく話し合うことが大切」
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