2015/01/21
発がん性が疑われる試験データを隠したまま新薬を販売しようとした製薬会社を内部告発した元研究者、北野静雄さん(65)の講演会が日、名古屋市瑞穂区の名古屋市立大であった。新薬の販売中止につなげた経験から、研究者や薬剤師を目指す学生約250人に、薬を扱う責任や覚悟を語った。 (佐藤裕介)
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講演会は同大薬学部の授業の一環で開催した。北野さんは1974年、製薬企業に入社し、新薬の開発に従事した。仕事は「楽しくて仕方なかった」が80年、会社が発がん性の疑われる薬を発売しようとしていることを知った。
たとえ販売を国に申請しても「専門家集団を抱える国が気付いてくれるかもしれない」と考えたが、会社が関連するデータを隠したことから翌年、国は新薬の販売を承認した。
「黙っていれば、薬害で人を殺すことになるかもしれないと思った」という北野さんは、社内で労働組合をつくり、会社に新薬の製造・販売の中止を要求するとともに、内部告発にも動きだした。
会社からは「将来がなくなる」などと脅されたが、新聞報道などもあり、国が調査を開始。結局、会社は新薬の販売を中止した。
北野さんは最後に、学生に向かって「皆さんもしっかりとした倫理観をもって仕事に当たってほしい」と呼び掛けると、会場からは大きな拍手が上がった。
薬学部3年、丸岡純也さん(22)は「薬の研究や開発に携わる人間は高い倫理観をもって仕事に当たらなければならないとあらためて実感できた」と話した。
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