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【岐阜】岐阜の五輪メダリストが新事業

2014/12/04

引退選手の就活 ともに汗

 スポーツ選手だって会社で活躍できる。長野五輪のスピードスケート・ショートトラックで銅メダルを獲得し、競輪選手としても活躍した植松仁さん(40)=岐阜県羽島市竹鼻町=が、スポーツ選手の就職支援を目指す事業を始めた。「自分と同じように仕事で苦労してほしくない。選手の能力は仕事にだって役立てられる」。現役選手時代と会社員の経験を融合させ、選手の第2の人生を支える。(岐阜報道部・宇佐美尚)

 植松さんは5歳でスケートを始め、1998年の長野五輪はショートトラック500メートルで3位。ただ、高校卒業後からスケート引退までに、所属企業が2度も倒産した。2000年に競輪に転向したが、練習のし過ぎで体調を崩して10年後に引退。一般企業に就職を考えたとき、あっせんしてくれる会社の担当者から、経歴を見て言われた。「植松さんはずっと無職の扱いですね」。選手時代の実績は全く評価されなかった。

 引退後もコーチや解説者として生活できるのは、トップ選手の中でもごく一部。実業団所属の選手でも、引退と同時に職を失う人は多い。

 その後、働いていた自転車店の客の紹介で、なんとか航空機部品会社に職を得た。そこで感じたのは、仕事とスポーツの共通項だ。「五輪を目指すなら4年間の計画を立て、目標に向かって現状把握や原因分析をして解決法を探る。それは仕事も同じ」。だが企業も選手も、スポーツで培った考え方や能力が仕事に生かせると気づいていない。「企業と選手の間の溝を埋めたい」と8月に会社を退職し、新たな事業を始めた。

 一般企業の社員向けに、トレーニング計画の経験を生かしたセミナーを開催。同時にスポーツ選手の能力にも目を向けてもらうよう働きかける。選手や競技団体向けの講習では、成績向上のアドバイスとともに、将来の仕事にも意識を向けてもらう。

 「自分が苦労したからこそ、スポーツ選手が普通の人と同じように仕事を選べるようになってほしい」。五輪メダリストの新たな挑戦が始まった。

「選手の能力は仕事にだって役立てられる」と話す植松仁さん=岐阜県羽島市竹鼻町で
「選手の能力は仕事にだって役立てられる」と話す植松仁さん=岐阜県羽島市竹鼻町で