2014/10/26
東海地方の都市近郊で、大型量販店の進出が相次ぎ、パート主婦の人手不足感が強まっている。中小の製造業者は求人に応募がなかったり、ベテランの技能者が離職したりするケースが続出。量販店が示す高い賃金に対抗して地場の業者も賃上げをするなど、人材確保に向けた消耗戦が続く。(経済部・小柳悠志)
「主婦はどこに消えたのだろう」。三重県北部の自動車部品製造会社社長(39)は首をかしげる。完成品を検査する30~50代のパート女性を昨年から急に採用できなくなったためだ。
採用難の大きな原因と考えられるのが、昨年11月に開業した近くの大型ショッピングセンター。8万4000平方メートルの総合スーパーに加え、映画館や百五十の専門店がある。時給1000円を出す店もあったため、この会社は対抗して従業員の時給を880円から960円に引き上げた。
月100万円を投じて求人広告を出すものの、空振りに終わることが多い。部品の輸出は伸びているが、パート従業員は60人程度で頭打ち。面接に1人も来ない月もあり、社長は「求人費がかさむ」と嘆く。
人材雇用サービスのリクルートジョブズ(東京)が実施した東海(愛知、三重、岐阜、静岡県)のアルバイト・パート募集時の平均時給調査では、今年9月は900円。2年前の890円、昨年の897円から徐々に上がっている。
海鮮せんべいのスギ製菓(愛知県碧南市)は、250人余りの従業員のうち半数以上がパート女性。10人以上の追加採用を目指すが、周辺のドラッグストアやホームセンターの開業で応募が減っている。消費税増税の反動減も収まり、販売拡大が見込めるところに、水を差された格好だ。
「今いるパートさんが、他の会社に移ったら大変」と杉浦敏夫社長(41)。親睦旅行を開くなど職場の融和でつなぎ留めに力を注ぐ。
岐阜県美濃地方でも、複合商業施設の開業でレジ打ちなどの需要が急伸。ある縫製工場では、下請けのミシン裁縫職人が「量販店の賃金の方が高い」として廃業する例が相次ぐ。工場の経営者は「熟練職人がいなくなれば、商売の屋台骨が揺らぐ」と明かす。
こうした人手不足の背景には、東海地方での小売りの大手資本の活発な設備投資があるようだ。日銀名古屋支店の調査によると、リーマン・ショック直前の2007年度の投資額を100とした場合、小売業を含む非製造業の14年度計画は107で、製造業の67を大きく引き離す。
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