2008/12/17
来春闘の経営指針となる日本経団連の二〇〇九年版経営労働政策委員会報告が公表された。雇用維持を打ち出す一方、賃上げは困難との姿勢だ。目指したはずの「希望の国」はどこへいったのか。
「現在は第一次石油ショック、バブル崩壊後の長期不況に続く第三の危機だ。その中で企業は雇用の安定に最大限努力する。賃上げは個別企業の労使交渉によるが困難と判断する企業も多い」。記者会見した中村芳夫事務総長は淡々と語った。
今回の報告は世界同時不況への危機感が下敷きになっている。確かに主要国が相次いで大規模な景気対策を打ち出したことは米国発の金融危機がいかに深刻で長期化しかねないことを裏付ける。そうした認識を持つことは当然だ。
だがその割には雇用や景気での企業の役割がはっきりしない。
たとえば雇用について報告は「雇用の安定に努力する」と極めて簡単な表現にとどまっている。
過去の報告にあった「日本企業はあらゆる経営資源の中で人材を最も重視する人間尊重の経営姿勢をとっている」との表現は影も形もない。最近の“従業員切り”を意識してか、歯切れが悪い。企業の雇用調整を追認した格好だ。
賃上げだけは厳しい表現だ。
昨年は「付加価値増加額の一部は総額人件費改定の原資とする」と賃上げ要求に応じる姿勢を明確にした。今回も同じ文言を採用しつつ「企業の減益傾向が一層強まる中、ベースアップは困難と判断する企業も多いものと見込まれる」と賃上げは論外との考えだ。
連合のベア要求にも「物価上昇は外的要因であり、賃金決定の根拠にはならない」と突き放す。
こうしたかたくなな姿勢では日本経済は回復しないだろう。
東証一部上場企業の来年三月期決算の配当金総額は久しぶりに減額になるとはいえ、今年とほぼ同額程度を確保する見通しだ。年間配当を増額・維持する企業もかなり多い。日本企業に余力はある。
悪化する景気に歯止めをかけるには内需拡大が重要だ。雇用を確保し、賃上げで可処分所得を増やし個人消費に力をつける。政府の景気対策もいいが、一番大事なのは中間所得層の強化である。企業が困難な経済状況を切り開く先導役とならなくて誰がやるのか。
労働組合も正念場だ。非正規雇用労働者対策を含めた交渉に取り組まなければならない。雇用も賃上げもしっかりと獲得すべきだ。
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