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【岐阜】トップの流儀/KVK 末松正幸社長(52)

2014/06/25

社員の人柄見極める 

 大学を卒業して最初に就職したのは、名古屋に本社のあるインターホンメーカーでした。当時はバブルで景気が良かった。けれど、上司の生活は質素で、「この会社で一生働くのか」と疑問を持ってしまった。若気の至りですね。華やかな暮らしの幻想を勝手に抱いていた。

 営業マンとして丸4年働き、辞めました。勤務地が横浜だったので地元に帰りたくなったのも理由のひとつ。次の働き口が決まらないまま、岐阜の実家に戻ってきました。

 今の会社は、新聞の求人広告で見つけました。対象は資材の仕入れ担当者。売る側と買う側で立場は逆転しますが、「これまでのスキルが生かせる」と思い再就職しました。27歳でした。

 前の会社は社員を管理するのが好きで、営業成績や販売計画の数字にとにかく厳しかった。でも、ここは職人かたぎの社員が多く、ものづくりへの尊敬の念にあふれていた。社員を信じて仕事を任せる、度量の大きさを感じました。

 一方で何か新しいことを始めることに、ためらう雰囲気も感じます。「中国で何か新しい仕事をしたいから、考えてくれ」と声をかけても、みんな下を向いてしまう。岐阜の人の特徴でしょうね。

 創業以来、商品開発には力を入れてきました。熱湯と冷水を手元で調整できるシャワーを1967年に商品化し、シャワー普及の足がかりとなった。銭湯や旅館にある、ボタンを1回押すと洗いおけ1杯分のお湯が出るのもうちの商品。水栓金具に特化した強みを生かし、細かなニーズに対応しています。

 社長になってからは、全国の営業拠点を年1度は回ります。現地の社員とあいさつするだけで、そこの現状が何となく分かります。お酒が好きなので、夜は社員を誘い出して、とことん飲む。カラオケでは自ら進んで歌う。自分を飾らないでいると、向こうから本音を話してくれます。

 4年前から管理職研修と称して富士山や御岳山など3000メートル級の山に登っています。苦しそうな同僚に自分のつえを貸し出すのもいれば、登山前はでかい口をたたいていたのに、すぐにへばって弱音を吐くのもいる。登山は人柄がよく見えます。

 そうやって手に入れた生の情報を、どう会社の成長戦略に仕立てるか。そこは自分の手腕です。今は仕事が一番楽しいので、読書や映画観賞の息抜き以外は会社のことだけを考えています。(聞き手・末松茂永)

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 すえまつ・まさゆき 1961年、岐阜市野一色生まれ。岐阜北高校、南山大学を卒業し、88年にKVKに入社した。企画経理部長、常務を歴任し、2009年から現職。

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会社概要

 KVK 1939年、北村鋳造所として名古屋市で創業。63年、本社機能を現在の岐阜市黒野に移す。水栓金具の専業メーカーで、国内シェアは25%を占める。89年、中国に子会社を設立した。国内では21カ所に営業拠点を置く。子会社も含めて従業員は1381人(3月末時点)。

「今は仕事が一番楽しい」と語る末松正幸社長=富加町高畑のKVK富加工場で
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