2014/06/16
最低レベルの障害者雇用
昨年、障害者の雇用率が全国最下位を記録した三重県。ハローワークを通じた障害者の就職件数は4年連続で最高値を更新しているが、雇用率は全国的にも低水準にある。中でも企業数が最多のハローワーク四日市管内(四日市市、菰野、川越町)は県内で最低レベルの状況が続く。特殊な勤務体制のコンビナート関連企業が多い地域的な課題を抱え、行政は企業と障害者をつなぐきめ細かい支援を続ける。(河崎裕介)
「どのような仕事を任せて良いか分からない」。県や市が企業に取ったアンケートで、採用担当者の多くが障害者の業務を創出する難しさを話す。
障害者雇用促進法で、毎年6月1日時点の雇用状況をハローワークに報告することが義務付けられており、昨年4月から法定雇用率が2%に上がった。
四日市管内は昨年、県平均の1・60%を大きく下回る1・46%。県外に本社を置く企業の数字が反映されないという事情はあるが、低迷している。
管内の企業は四日市港やコンビナート関連を中心に製造、運輸業が半数近くを占める。製造業は絶えず工場を稼働させるために三交代制勤務を取ることが多い。夜勤は心身への負担が大きく、公共交通機関ではなく、車で出勤する必要があり、障害者の採用が困難になる。
運輸業は倉庫での荷役や高所の作業など危険を伴う可能性があり「障害者の安全を確保しきれない」という意見が多い。全業種で共通して、職場のバリアフリー化や服薬や通院が可能な環境整備など障害への支援体制が整わず、採用に至らない場合もある。
法定雇用率が未達成の企業は昨年6月時点で130社。従業員数50~100人の中小企業が半分を占め、2人を雇用すれば達成できる。ハローワークや県、市の担当者は「未達成企業は、そもそも障害者がいない例が多い。実際に障害者に接して働く姿をイメージしてもらうのが重要」と口をそろえる。
ハローワーク四日市は昨年から企業に障害者の「通年求人」を要請。障害の特性や程度など個別の事情に対応できるように小規模の就職面接会も開き、仲介に努める。
県や市では嘱託職員によるアドバイザーやコーディネーターの地道な企業訪問に力を入れる。県は民間企業OB、市は元学校教員を派遣。市は2013年度に132企業を回った。未達成企業を中心に障害者雇用の課題を聞き取ったり、採用につながる研修先を探したりする。
一連の取り組みでハローワーク四日市を通じた就職件数は、雇用率最低を記録した昨年6月から1年間で前年同期比の2倍以上となる22件になった。1・46%だった雇用率も、国が秋にまとめる統計では1・60%ほどに改善する見込みだ。
中村求(もとむ)雇用指導官は「今は就職にこぎつけることが課題だが、その先は離職せず、定着させる取り組みが必要になる。数字にこだわるばかりでなく、地道な支援を続けていかねばならない」と強調した。
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