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【社会】外食 人手満たせず悪循環

2014/06/02

従業員に負担 → 不満で退職 → 閉店

 景気回復を背景に賃金が上昇する中、外食産業などのサービス業で人手不足が深刻化している。好条件を提示しないと人が集まらなくなっているためで、少ない人手に負担を強いているとして企業側への不満が高まり、退職を招く悪循環も。牛丼の大手チェーン「すき家」では、チェーン店舗の一部が休業に追い込まれる事態となっている。

 名古屋市内の牛丼チェーン「すき家」のある店舗。週末の31日午前1時すぎ、アルバイト店員が1人で、次から次へと訪れる客の対応に追われていた。

 チェーンを運営するゼンショーホールディングス(HD)広報室によると、人手不足などの影響で全国145店が営業を休止中。愛知、三重、岐阜の東海三県でも14店に上る。

 「パワーアップ工事中」と書かれた看板が立つのは、名古屋市中村区の名駅店。3月20日から一時閉店したまま、既に2カ月を超えた。広報室は「人手不足に加え、2月から始めた新商品が仕込みに時間がかかり、従業員の負担が増えてしまった」と説明する。

 5月29日には「ニクの日」だとして、インターネット上で店員らに「ストライキをしよう」という呼び掛けが広がる騒ぎも起きた。実際はストによる閉店は確認されず、千葉県船橋市のグループ会社工場で1人がストをしただけというが、店員の間では依然、火種はくすぶっている。

 愛知県内の店で働く20代のアルバイト男性は「アルバイトに何もかも任せすぎで、手が回らない。みんな『しんどい』と感じている」と不満をもらす。

 ゼンショーHDは2014年度、平均1%の時給引き上げや、効率的な調理機器の入れ替えなどでアルバイト店員の負担を減らす対策を進めているものの「依然として人手不足の影響は続いている」と特効薬は見当たらないのが実情だ。

 一方、長時間労働の問題が指摘される居酒屋「和民」を手掛けるワタミは、4月入社の新卒社員が120人と当初目標の半分にとどまった。従業員の仕事の負荷を減らすため14年度中に60店舗を閉鎖、1店舗あたりの従業員を増やす。

 シンクタンク・共立総合研究所(岐阜県大垣市)の江口忍副社長は「企業にとってはコスト上昇につながるため、デフレ環境下では踏み切れなかったことだが、賃金を上げてでも人材を確保することが現実的に必要になっている」と指摘。また、専門家の間では、単価を引き上げて利益を増やすビジネスモデルへの転換を求める声も出ている。

閉店しているすき家の店舗=5月29日、名古屋市内で
閉店しているすき家の店舗=5月29日、名古屋市内で