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【社会】「残業代ゼロ」導入へ 首相指示 一般勤労者は除外

2014/05/29

 安倍晋三首相は28日、政府の産業競争力会議で、残業代支払いなどの労働時間規制を適用除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」に関し「成果で評価される自由な働き方にふさわしい新たな選択肢を示す必要がある」と述べ、労働時間制度の見直しを指示した。田村憲久厚生労働相は対象を限って導入受け入れの方針を表明し、6月の成長戦略に盛り込まれる見通しとなった。早ければ来年の通常国会に労働基準法改正案を提出する。

 ◇ ◇ ◇

 制度には労働側が「残業代ゼロ」と反発している。首相は会議で「長時間労働を強いられ、残業代がなくなり賃金が下がるという誤解があるが、絶対にあってはならない」と強調した。

 導入に際し(1)希望しない人には適用しない(2)職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人材に対象を絞り込む(3)賃金が減らないよう適正な処遇を確保する-との3条件を提示。併せて「時間で評価することがふさわしい一般の勤労者」は対象にしない考えを示した。

 競争力会議の民間議員の長谷川閑史(やすちか)武田薬品工業社長がまとめた案は対象を管理職候補層とし、具体的に経営企画、商品開発、ファンドマネジャーなどを「裁量度の高い人材」「中核・専門的人材」として挙げた。年収要件は示していない。一方、厚労省は「成果で評価できる世界レベルの高度専門職」に限定しての適用を主張している。

◆働き過ぎ助長強い反発
◆残業代ゼロ労働界「現状改善を」

 残業代がゼロになる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入の前提として、政府の産業競争力会議は働き過ぎ防止を掲げるが、制度には「長時間労働を助長する」との反発が強く、実効性にも疑問符が付く。労働界からは「まずは現状を改善するべきだ」との声が上がっている。

 28日に民間議員が示した提案では、対象労働者に労働時間の上限や年休取得日数の下限を設けるとした。しかし、企業にどう守らせ、労働基準監督署がどのようにチェックするのか、具体策は示されていない。

 1日8時間を原則とする労働時間規制が適用されず、厚生労働省からも「労働基準監督署のチェックが及ばない」との指摘がある。

 現行でも労働時間の上限規定がある。労働基準法では、労使協定を結んだ上での残業時間の上限は「月45時間、年360時間」としている。

 だが繁忙期など特別な事情がある場合、1年で半年を超えない範囲で上限を超えた協定を結ぶことができる。建設業、自動車運転など特定の事業や業務はそもそも、規定の適用除外になる。

 そのため「月150時間」といった上限を大幅に上回る協定のある企業も多く、労働界には「働き過ぎを許容する仕組みで、長時間労働の温床だ」との批判がある。

 労働基準監督官の経験が長い全労働省労働組合の森崎巌委員長は「まずは、現在の残業時間の上限をきちんと守らせるようにするべきだ」と話している。