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【社会】売り手市場 見据える短期戦 就職率94.4%

2014/05/17

大学生「好況続いて」 企業「競争厳しく」

 文部科学省が16日発表した今春卒業した大学生の就職率は前年比0・5ポイント増の94・4%と3年連続で上昇した。売り手市場の中、現3年生の会社説明会解禁は現行より3カ月繰り下がって来年3月に、選考活動開始は4カ月遅い8月からとなる。大学、学生、企業はどう対応するのか。

 大学の就職支援担当者らは「企業の採用意欲が強まっていることを肌で感じる」と口をそろえる。名城大(名古屋市天白区)には2013年度、前年比10%増となる1万900社から求人があった。特に大企業の人材確保の動きが強く、今春の卒業生は前年比1・5ポイント増の47・1%が従業員500人以上の企業に就職。内定を得ても「景気はさらに上向く」と、より好条件の就職を狙って浪人する学生も。

 現3年生の就活について名古屋大(同市千種区)は、採用試験への対策講座のスケジュールを組み直すなどの対応をする方針だ。

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 大学4年生は企業の採用意欲の高まりを実感。愛知学院大総合政策学部の富田拓海さん(21)は、5月上旬までに住宅設備メーカーなど3社から内定を得た。「連日の会社説明会で体力的につらい時期もあったが、予想よりはすんなり内定をもらえた」と話す。中部大経営情報学部の沢田あずささん(21)も情報システム会社など2社から内定を獲得。「企業が軒並み採用予定人数を増やしていて景気の良さが分かる」と喜ぶ。

 3年生からは不安の声が。中京大経営学部の石橋幹隆さん(20)は「就職情報誌の担当者の講演で、採用活動の期間が短くなるので企業は面接以前のエントリーシートや適性検査の段階で応募者をかなり絞り込む可能性が高いと聞いた。解禁直後に先輩が卒業してしまい、相談相手も限られる。せめて今の好景気が続いてほしい」と話した。

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 中部地方の企業は、今後も人材の確保ができるか危機感を強める。

 「アベノミクスによる景気回復で優秀な人材を獲得する競争はますます厳しくなる」。自動車部品大手デンソー(愛知県刈谷市)の採用担当者は心配する。内定の辞退を防ぐため「内定者と密接に連絡を取り合っている」というのは、流通大手のユニー(同県稲沢市)。ブラザー工業(名古屋市)は愛着を持ってもらおうと、内定者研修に力を入れる。

 さらに苦戦が予想されるのが大手より知名度が低い中小企業だが、少し傾向に変化も。愛知中小企業家同友会は「学生の間で過酷な労働を強いる『ブラック企業』への警戒が強く、人を大切にする中小に目を向ける人が増えた」と説明。合同説明会や大学への出前講座などで学生の関心を高める接触の機会を増やしている。