2014/05/24
小中学生が地元企業での職場体験や職業についての講話を聞くことで、多様な生き方があることを知ってもらう「キャリア教育」。瀬戸市では2005年度から、産業界や市などでつくる団体を中心に、地域ぐるみで展開している。この10年で教育現場に定着し、瀬戸の特色となっている。
「どや、音が変わったの分かるか」
幡山中学校音楽室で22日、調律師の山田伸夫さん(49)がグランドピアノの弦の緩みを調節した。2年生の生徒は耳をそばだたせ、変化を感じると、「うん、うん」とうなずいた。
山田さんは顧客に対してどう振る舞っているのかも触れ、「お金をいただく以上、相手の気持ちを考えてきちっとやる。それは突然できるものではなく、日々繰り返すからできる」と話した。生徒たちは「人生の話も面白かった」と感想を話した。
親や先生以外の知らない大人の話に、生徒たちの表情は真剣だ。この日はアナウンサーや看護師、市職員ら5人が訪れ、各クラスに分かれて語った。
講師を派遣したのは、瀬戸キャリア教育推進協議会。瀬戸商工会議所が中核となり、産業界や市などで組織する。主な事業は、経営者やNPO代表など市民講師96人を小中学校に派遣する「職業講座」と、地元企業で働くことを体験する「職場体験」。昨年度は市民講師を94回派遣し、職場体験の受け入れ登録企業も400を超えた。
学校は独自に講師や企業を探す必要がなく、校区外の講師にも依頼できる。市から協議会へ出される負担金400万円が講師への謝礼に充てられるため、学校に負担はない。事業を参考にしようと福島県議会や宇都宮市教委などからも視察が相次ぎ、3月には日本商議所から表彰を受けた。
瀬戸商議所のキャリア教育推進コーディネーター山田素子さんは「いろんな大人の姿を見てもらうことで、自分の生き方の参考にしてもらえる。子どもたちには将来を自分で決め、自主性を伸ばす力をキャリア教育で身に付けてほしい」とさらなる発展を願う。
(水越直哉)
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