中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【経済】人手不足に企業悲鳴 中部 建設はじめ福祉でも

2014/05/13

 名古屋証券取引所に上場する中部の企業で、人手不足が深刻化している。建設業や製造業をはじめ福祉、情報処理など幅広い業種に広がってきた。人件費の高騰を招き、回復軌道に乗る企業にとっては業績の足かせになりかねない。(山上隆之、後藤隆行、稲田雅文)

 「面接希望者を募る広告を出し続けているものの、保育士の確保は極めて困難だ」。9日の決算会見で染色加工大手、東海染工(名古屋市)の八代芳明社長が打ち明けた。

 子会社「トットメイト」による保育施設や病院・企業内託児所の運営などの保育サービス事業は、2014年3月期に施設を前期比8カ所増の71カ所に拡大し、売上高は12・6%増の16億円になった。しかし、募集広告の費用がかさみ、同事業の営業利益は7・1%減の5000万円に落ち込んだ。

 「保育士の試験が難しくて、学生の希望者が少なくなっている」と八代社長。「人手不足は続く。施設拡大のスピードを緩めて対応するしかない」と語る。

 ただでさえ「きつい」と敬遠され、公共投資削減で担い手も減った建設業界はさらに深刻だ。東日本大震災の復興需要に加え、名古屋駅周辺の高層ビル建設や20年東京五輪の開催決定が追い打ちをかける。

 矢作建設工業(名古屋市)は14年3月期に過去最高益となったが、15年3月期の業績予想で減収減益を見込む。藤本和久社長は減益要因の一つに「下請けに発注する際の人件費が高騰している」と説明。「今後は拡大路線をとりにくい。人繰りのつく範囲での予想しかたてられない」と語った。

 ソフトウエア開発のテスク(名古屋市)は4月の消費税増税前、全国のスーパーに納める販売管理システムの改修や設定変更の作業に追われ、システムエンジニア(SE)不足に直面。外部からの派遣で何とか乗り切ったという。

 採用も直接担当している梅田源社長は「他社の動向を見ると、経験者なら誰でもという感じで活発に内定が出ている。人件費も上昇しており、今後のコストアップ要因になってきそうだ」と警戒する。

    ◇

◆東海の求人倍率
◆全国平均上回る

 東海地方の人手不足は雇用統計から見ても顕著だ。厚生労働省が2日に発表した3月の有効求人倍率(職を探している1人に対し、企業から何人の求人があるかの割合)では、愛知県が1・55倍で全国トップ。岐阜県が1・25倍、三重県も1・21倍と、全国平均の1・07倍を上回っている。

 特に愛知県では、型枠や鉄筋などの建設部門で9・70倍に跳ね上がり、開発技術者で5・01倍、情報処理技術者で3・27倍などの高倍率が目立つ。愛知労働局の担当者は「優秀な人材を確保するため、賃上げや待遇改善を迫られる企業は多い。人手不足の解消に向け、業界団体などと連携した就職説明会を開いていく」と話している。