2014/05/06
異世代との交流刺激に「やる気スイッチ入れて」
今、社会の各分野で活躍している人たちはどんな学生生活を送っていたのか。若手の社会人に聞くと、やはり早くから将来のビジョンをしっかりと描き、実現に向けて努力していた。趣味や好きなことに打ち込むのも悪くないが、こうした人たちの経験も参考にしてほしい。(字井章人)
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2009年に愛知学院大(愛知県日進市)を卒業し、名古屋観光ホテル(名古屋市中区)に就職した小原大輔さん(27)。ベルサービスなどホテルマンとしての基礎を身に付け、今は館内のラウンジ「ジャルダン」のナンバースリーとしてアルバイトのスタッフをまとめている。
大学受験時は警察官になることを念頭に法学部を選んだが、1年の冬に始めたラーメン店のアルバイトで、接客業や事業経営の面白さに目覚めた。2年のときにはコンサルタントらが開く経営セミナーに参加するため、1人で東京や大阪に足を延ばした。社会人に求められるリーダーシップを学び、多様な業種の経営者から激励や教えを受けた。
セミナーに参加するような積極的な学生は周囲に限られていたが、意識が近い友人たちと情報を交換して刺激し合った。3年冬からの就職活動は「さまざまな企業の経営陣の考え方を無料で聞くことができた。楽しくて仕方なかった」と振り返る。セミナーなどで世代や立場が異なる社会人と交流した経験も生き「面接で落ち着いて話ができた」と話した。
現在は8月のソムリエ資格試験に向けて勉強中だ。大学生に「何もせず漫然と過ごすのは非常にもったいない。将来に向けたやる気のスイッチを早く自分で入れてほしい」とアドバイスする。
昨年、中京大(名古屋市昭和区)の総合政策学部を卒業し、NTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)で働く立川一磨さん(23)の転機も1年生の冬だった。
入学後、高校まで続けた陸上競技をやめて趣味の釣りやボウリング、カラオケなど「思い切り遊んでいた」。遊び飽きて将来への不安が芽生えつつあった正月にテレビをつけると、かつてのライバルが箱根駅伝に出場して懸命に走っていた。「自分は何をやっているのか。このままではいけない」と、中京大屈指の厳しさで知られる坂田隆文教授のゼミに入った。
ゼミは企業と連携して新商品を開発する活動が中心。5、6社とのプロジェクトが同時に進み、毎週多くの課題が出された。「遅刻は1秒も許されず、指導は非常に厳しかった」と振り返る。しかし「ここで逃げたら何も続かない」と奮起。坂田教授が経済人を招いて開く勉強会にも毎月参加し、社会人の物の見方を学んでコミュニケーション力を磨いた。
現在の仕事はインターネットサービスの故障対応。帰宅が深夜になる日も少なくないが「幅広い業種の方々と接する仕事に面白さを感じている」と話す。後輩の学生には「ゼミでもアルバイトの経験でも何でもいいから人に負けない武器を持って。そのために幅広い世代や異なる立場の人とつきあってほしい」と助言する。
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◆1、2年の時から将来見据える
京都大の溝上慎一准教授(高等教育学)は「社会で活躍するには大学2年生までの努力がカギになる」と話す。
溝上准教授は2012年、東京大などと共同で40歳未満の社会人3000人を対象に、学生時代と就職後の仕事ぶりを振り返ってもらう調査を実施。就職先の仕事や考え方をスムーズに身に付けて適応するには、大学1、2年時から将来の見通しを持ち、実現に向けて行動することが有効との結果を得た。具体例として、国際的な仕事をしたければTOEICの受験や留学を、子どもに関わる仕事を目指すなら関連のサークルに入ることなどを挙げた。
就きたい仕事がはっきりすれば授業にも身が入ると指摘する。「エンジニアを目指せば線形代数や力学といった基礎知識の習得が退屈に感じなくなる。プレゼンやディスカッションが多い科目は通常の講義より大変だが、確実に力が付くので履修すべきだ」と話す。
さらに、在学中に社会人と触れ合う機会の重要性も強調。「アルバイト以外でも経営者の講演会など接点のチャンスはたくさんある。積極的にアクションを起こそう」と呼び掛ける。
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