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【社会】「女性の視点で」機動隊統率

2014/04/23

警視庁、副隊長に初登用

 警察の中でも「男性社会」が色濃い機動隊に今春、初めて女性の副隊長が誕生した。警視庁第五機動隊の宮崎真由美警視(46)。「伝統は引き継ぎつつ、経験を生かして活動への理解を深めたい」。異例の登用にも気負わず、隊員300人と米大統領来日の警備に臨む。

 抜てきした同庁の幹部は「女性登用の本気度が伝わる上、気さくで努力家の宮崎さんは適任だった」と説明している。

 宮崎さんは交通部門が長く、難関をくぐり抜けて白バイ隊員を務めたこともある。警備部門では、皇族の護衛を年半担当したほか、テロを防ぐ官民協力の枠組みづくりに奔走。企業を訪ね歩き、理解を求めた。

 ただ、機動隊の勤務はない。デモや雑踏の警備、爆発物処理、災害救助…。腕力が求められ危険も伴うため、全国の隊員8,000人のうち女性は1%余にとどまる。

 「務まるのか」。不安を抱いたが、警察官の夫(48)から「驚いているのは隊員も同じ。自分らしくやればいい」と助言され、気持ちを切り替えた。

 着任して1カ月。平均年齢27歳の若手隊員に交じり、盾やヘルメットなど重装備の訓練をこなす中で、団結力の強さを肌で感じた。「1人1人に個性はあっても、任務には真っすぐ向かう」。こうした伝統は「大切に引き継ぐ」と決意する。

 その上で、女性の視点と、交通部門や官民協力で培った経験も隊員に伝えていくつもりだ。

 大規模な警備では交通規制や検問で不便を強いるため、住民の理解と協力が欠かせない。「ご協力ください」で終わらせず、例えば「事故が多いから、気を付けてね」と添える方が理解は深まる。「私なりの接し方を見て何かを感じ取ってもらえれば」と考えている。

 警察では、結婚や出産を機に辞める女性が多く、幹部はまだ少ない。自身も子育てと仕事の両立に苦労したが、働きやすい環境は少しずつ整えられている。後輩の女性に「今は『初』の女性登用がいずれ当然になる。諦めずに踏ん張ってほしい」とエールを送る。

◆女性所属長全国わずか16人

 警察庁によると、女性警察官は年々増えているが、全体に占める割合は2013年4月時点で7・2%。1994年に初の女性署長が警視庁で誕生したが、今年4月までに所属長級を務めたのは全国で愛知、三重などわずか16人だ。

 警察庁の有識者検討会は13年5月、女性の力を積極的に活用するよう提言。採用を増やし、今まで女性を配置しなかったポストへも聖域なく登用するよう求めた。

 警察庁は、女性の活用に特化した部署を設けるなどの対策強化を指示し、全国で取り組みが進む。同庁も本年度、急な残業で当日夕方にベビーシッターを申し込んでも通常料金で利用できる事業を導入する。

国会議事堂周辺を巡視する警視庁第5機動隊の宮崎真由美副隊長=東京・永田町で
国会議事堂周辺を巡視する警視庁第5機動隊の宮崎真由美副隊長=東京・永田町で