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【大学生】アジアに熱い視線 インターンシップや留学

2014/04/22

企業も関心、就職直結

 海外に留学する大学生が減少する中で、アジアを中心とする新興国でインターンシップ(就業体験)や留学経験を積ませる大学が増えている。日本企業の進出が盛んな国で経済界が求めるグローバルな人材を育てる狙いがあり、就職で大きな武器になるとみている。 (字井章人)

 ◇ ◇ ◇

 名古屋商科大(愛知県日進市)は2012年度から、春夏の長期休みに学生をアジアの日系企業に派遣するインターンシッププログラムを始めた。渡航費と宿泊費の半額を大学が支給する。今春は35人の学生がインド、タイ、フィリピン、カンボジア、ベトナムの5カ国を訪れ、製造業やコンサルタント会社、ホテルなどで2~3週間、就業を体験した。

 4月中旬の帰国報告会で参加学生は「法整備が未熟な国で奮闘する日本企業の実態が分かった」「現地従業員の温かさに救われたが、語学の重要性を痛感した」などと発表した。

 プログラムを担当する同大進路支援委員会の村井睦男委員長によると、成長市場のアジアに寄せる経済界の関心は高く、従来のタイやベトナムに加え、近年はカンボジアやインドに進出する企業が増加。こうした国での就業体験は「学生のやる気や自信につながるのはもちろん、就職活動でも企業に評価してもらえる」と説明する。

 タイ・バンコク郊外の自動車部品工場で昨夏働いた4年の小林大祐さんは、実家のある静岡県内の信用金庫を第1志望で受験した。信金は初の海外拠点をバンコクに設けたばかりだったため、現地の様子についての質疑で面接が盛り上がり、内定を得た。「驚くほど強い関心を持って話を聞いてもらえた」と振り返る。

 筑波大(茨城県つくば市)は今年、アジアやアフリカ、中南米の新興国への留学と滞在中のインターンシップを義務付けた「地域研究イノベーション学位プログラム」を始めた。日本の国際競争力向上に貢献できる人材の育成を目指す。

 参加者は3年次までに現地語を学び、4年生の後半に早期卒業して同大の大学院に進学。早ければ直後に1年間の留学に旅立ち、帰国後に半年で修士論文をまとめる。従来は修士号取得まで学部四年と修士2年、留学1年の計7年が必要だったところを最短5年間で終えられるため、留学や大学院進学をためらわせる要因となってきた修学期間の長さを短縮できる。

 プログラムに携わる遅野井茂雄教授は「参加者は企業からの引く手あまたで、就職活動をする必要がないほどの人材に育つはず」と卒業後の活躍に強い自信を示す。ただ、一般の学生が希望する留学先は依然として欧米が多いとして「経済界の主戦場はアジアを中心とする新興国。すでに血眼になって競争している企業の動きや人材ニーズに、学生の意識変化が追いついていない」と指摘する。

 就職情報会社ディスコ(東京都文京区)も12年11月、アジアに特化した留学支援サービス「グローバルスタディアジア」を開始。既に200人以上の学生をシンガポールやインドなどに送っている。

 担当者は「今の企業がほしいのはアジアで活躍できる人。就活の面接で、欧米への留学経験よりも、例えばインドなら面接官からほぼ確実に『なぜインドへ?』と関心を引き出せる」と話す。

◆ボランティアも新興国知る機会

 海外ボランティアの訪問先としても、地理的に近くて滞在費が安いアジアは人気だ。名古屋外国語大(愛知県日進市)の学生13人は2月、フィリピン・マニラ近郊の町に2週間滞在し、貧困層の子どもたちに給食を作った。

 3年の西本真樹さんは、発展途上国の現状を知りたくて参加。昨夏に留学した米国や日本との生活水準の格差に驚いた。ただ「大人も子どももどんどん話し掛けてくれる人懐こい国民性は大好き。英語で話した機会は米国留学中より多かったかも」と話す。

 2011年から毎春、プログラムを企画して学生を引率する宇治谷映子准教授は「熱気に満ちた新興国に身を置くことでいろんな考え方や積極性が身に付く。参加のきっかけはボランティアへの関心だが、結果的に就職活動でもアピールできるようだ」と話した。