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【くらし】女性の工夫仕事に生かす 否定的な言葉使わず/多数決は避け

2014/04/11

意見出し合い商品化

 長野市に本店を置く長野県労働金庫(長野ろうきん)。昨年1月、20~30代の女性社員9人が本店に集められた。労働者の金融機関とのイメージが強く、顧客も男性が多いため、女性を取り込もうとの狙いから、新商品開発プロジェクトが始まった。

 チームは約束を決めた。所属は関係なく「さん」付けで呼ぶ、従来の発想にとらわれない-など。「無理だ」「意味がない」「お金がかかる」といった否定的な言葉も使わないことで一致。メンバーの1人で、本店経営企画部の小林佳代さんは、「女性に喜んでもらえる商品は何かを考え、自分たちの意見が忠実に商品化されたことが励みになった」と振り返る。

 会議では3人ずつの少人数に分け、意見を出しやすい和やかな雰囲気づくりが徹底された。通常の会議では1つの結論を導き出すため、多数決で方向性を決めることが多い。だが多数決は極力使わなかった。出た意見を「いいね」と評価し合うことで、新しいアイデアが生まれることも。

 会議の進行などをアドバイスした「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」経営戦略部コンサルタントの有馬祥子さんは、「仲間から出た意見を楽しむ、違う意見を引っ張り出す、視野を広げる投げかけをすることが、会議の場づくりには必要」と強調する。

 こうした会議を6回ほど開き、合意形成に時間をかけた。そして昨年10月、積立預金の新商品「わたしの積立 シュシュシリーズ」を発売。商品は独身女性向け、子ども積み立て、中高年の女性向けの3本立ての構成にした。

 チラシにはウエディングドレス姿や、いきいきと働く女性の写真などをちりばめ、女性誌のような華やかなデザインに。キャンペーン中、おしゃれなハンドソープや高級歯ブラシなどのプレゼントも用意。その名も「女子力応援グッズ」と名付けた。積立預金の契約件数は、発売後の3カ月間で前年同月比270%を達成した。

 女性社員だけとせず、全社的な取り組みに広げるにはどうしたらいいか。有馬さんは「アイデアや意見をたくさん引き出すため、上司は意見が出やすい場づくりを。開発は女性でも、販売や定着には上司や男性社員のノウハウと協力も必要」と話した。

      ◇

 女性が少ない職場で、顧客へのこまやかな配慮から、工夫を重ねる女性社員もいる。ダイキン工業東京支社の持田亜希さん(29)は、約1年前まで中小ビルのオーナー向けに、空調機の導入や、更新時期に機種交換を提案する仕事を担当。女性を意識したことはないが、商品の特徴などを分かりやすく伝えるには、どうしたらいいかを考えてきた。

 営業先には同社の製品を扱う設備業者の男性社員と出向くことが多い。見積書で口頭説明するだけで、十分に提案できていないケースもあった。持田さんは設備業者を交えた勉強会を企画し、適切な提案方法を考えた。

 機器の性能説明だけでなく、機器導入の利点を顧客が実感できるよう説明する。例えば「買い替えれば保守管理にかかる費用が削減でき、いくら得をする」という具合。費用対効果を前面に出した提案書や説明を心掛けた。

 「説明や提案の方法を工夫するだけで、顧客の食い付きが違った」と持田さん。高額な商品を扱うので、国や自治体などから出る補助金を活用できるよう、煩雑な申請作業も代行した。分かりやすさを心掛け、営業の仕事もしやすくなったと感じている。

 商品開発や業務改善など、女性の視点を生かした仕事の工夫に注目が集まっている。政府が掲げる成長戦略の柱でも「女性の活躍」が強調される。その仕事ぶりを取材すると、顧客への提案や会議の進行など、男女に限らず、普段の仕事に生かせるヒントが隠されていた。 (福沢英里)

積立預金の新商品をPRする「長野ろうきん」のチラシや冊子。女性社員のプロジェクトで生まれた
積立預金の新商品をPRする「長野ろうきん」のチラシや冊子。女性社員のプロジェクトで生まれた
「商品提案の仕方を工夫している」と話すダイキン工業の持田亜希さん=東京都港区で
「商品提案の仕方を工夫している」と話すダイキン工業の持田亜希さん=東京都港区で