2014/04/04
学校などで触れ合い事業
出産をした女性が仕事を諦めるのではなく、赤ちゃんと一緒だからこそできる仕事をしようという取り組みがある。NPO法人ママの働き方応援隊(神戸市)は赤ちゃんを学校や高齢者施設に派遣し、命の大切さや母親がどういう思いで子育てしているかを伝えている。2年前に本格化した活動は全国に広がり、昨秋には東京で、3月には愛知県豊橋市でも始まった。家庭外に活動の場があることで、子育てにもいい影響を与えているようだ。 (田辺利奈)
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豊橋市の通信制・第一学院高校。6カ月の赤ちゃんから2歳までの子どもと、「ママ講師」を務める母親の4組が参加し、生徒ら10人と触れ合った。親子1組が生徒2、3人ずつを担当。「抱っこする」「靴を履かせる」などのメニューを用意し、生徒たちに子育て体験をしてもらった。1人では食べることも歩くこともできない存在が、どのように手厚い世話を受けて大きくなるのかを実感してもらった。
中には赤ちゃんと接したことがない生徒もいて、突然泣きだされて戸惑う場面も。お菓子をあげたり、あやしたりして少しずつ慣れていった。「手が小さくて柔らかい」「握る力が意外と強い」などと話し、自然と笑顔が広がった。
育児休業中に参加した同県豊川市のフリーカメラマン、弓場真梨さん(32)は「子どもがいても母親が活躍できる場所は大切。家の外で1人の人間として評価されることで、自然と家庭でも優しくなれる」と話す。
結婚後7、8年、働きに出ずに過ごしていた豊川市の佐々木章代さんは2歳の娘と参加。「親がチャレンジする姿を見せることで、子どもにもいい影響があるはず」と話す。今後はママ講師の仲間で、講座や勉強会を開くことも計画している。
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同法人の事業は現在、全国11カ所の拠点で実施されている。小学校から大学までの授業では、命の大切さを伝えるほか、親になる準備を含めたキャリア教育を実施するのが目的。高齢者施設への派遣は、赤ちゃんとの触れ合いによる癒やしや、人生の先輩としての知識や経験を引き出すことを狙いにしている。
2月に神戸市のデイサービス施設で開かれたプログラムでは、5カ月~3歳の子どもと母親5組が、78~96歳のお年寄り約20人と交流した。
離乳食に関する悩みを話す母親には、高齢者から「リンゴをすって食べさせるといいよ」など、昔の経験を生かしたアドバイスも。孫がいないという片桐礼子さん(84)は「自分の孫みたいでかわいくて仕方ない」と顔をほころばせた。
1回の講座を開くのにかかる料金は3万円。ママ講師は育休中を除き、1回2000円の謝金を受け取る仕組み。同法人では、資金提供をしてくれるスポンサー企業も募っている。
同法人理事長の恵(めぐみ)夕喜子さん(57)は「赤ちゃんには人を笑顔にする力がある。それを社会問題の解決に生かし、母親の仕事にもつなげられる」と意義を語る。ひきこもりの人が純真な赤ちゃんと接するうちに社会復帰できたり、人を寄せ付けないような高齢者が、対人関係を築けるようになったりする姿を見てきた。子どもの持つ力を再確認することで、母親自身の自己肯定感も高まるという。
恵さんの孫は以前、待機児童になった。その際、孫を連れた息子の妻を自身の会社に呼び、仕事を手伝ってもらった。それを知った別の母親から「自分も通わせて」という声が多数届き、働く場づくりに取り組み始めた。
ママ講師には事前に養成講座を受けてもらう。座学や実習などで費用は3万円(育休中は2万円)。恵さんは「母親は支援される立場だと感じがちだが、子育て中であることがメリットになる働き方もあると知って」と話している。問い合わせはNPO法人ママの働き方応援隊=電078(381)5941=へ。
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