2014/03/28
仕事と家庭の両立に必要なのは「イクボス」! 男性の育児を支援してきた団体が、部下のワークライフバランス(WLB)実現を助ける「上司=ボス」を増やすプロジェクトを始めた。子育て中の男女に加え、親の介護をする世代にも役立つとして、社会への浸透を図る。
「もっと育児をしたい、育児休業も取りたいという男性社員は増えているが、今の働き方では難しいとの声も多い。残業が当たり前の職場を変えられるのは上司なんです」。NPO法人ファザーリング・ジャパン副代表理事の安藤哲也さん(51)は、今月中旬に東京都内で開いたイベントで訴えた。
同法人は、主に育児をする男性「イクメン」の支援に力を注いできた。セミナーでは、男女ともに定時退社を目指せば社員の生産性が上がることや、私生活の充実が心身の健康につながることなどを強調。最近は育休に加え、時短勤務などの制度を整える会社も増えたが、安藤さんは「上司の理解とフォローがなければ、制度を使う雰囲気は生まれない」と指摘する。
2年前から「イクボス養成塾」を開く群馬県労働政策課の担当者も、「経営者や管理職には、男性の育休などにマイナスイメージを持つ人も多い。良い事例を知り、意識を変えてもらう必要がある」と話す。働く人の減少が問題となる中、女性に加え、育児や介護をする人たちも働きやすい職場づくりは急務という。
同法人のプロジェクトはまず、イクボスの「可視化」を目指す。部下の評価を基にロールモデルとなる「イクボスの星」を選び、上司のエピソードを盛り込んだ川柳を募集する予定。4月に養成講座も始める。
イベントでは安藤さんが「イクボス10カ条」=表=も発表。職場のダイバーシティ(多様性)の大切さや、会議の削減といった時間捻出術を紹介した上で「まず隗(かい)より始めよ。ボス自身が家庭や地域生活を充実させ、人生を楽しんで」と呼び掛けた。
◆IT企業に先進例
長時間勤務が当然とされるIT企業で、WLBを着実に進めるイクボスがいる。ウィルド(東京)社長の大越賢治さん(38)。スケジュール管理ソフトを使い、社員間で公私の予定を公開して、残業や急な仕事の依頼を極力抑えている。
社員10人のうち、2人が時短勤務中。1~3歳の3児がいる横尾恵さん(28)は、1日4時間半勤務で「周りの理解があることが一番助かる」と力を込める。大越さんは「社員は週一回、30分の『おやつタイム』で子育てや趣味など、プライベートなことも話している。相手の状況が分かると協力しやすい」と話す。
仕事の受け方や進め方を変えた2年半前から、女性の入社希望者が増えた。男性社員も趣味や家族との時間を取るようになり、残業時間は大幅減。大越さんは「2年間は赤字だったが、皆が経験を積み、若手も育ったので新年度はよい数字を出せそう。WLBは業績向上ももたらすと証明したい」と笑顔で言った。
(竹上順子)
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