2014/03/14
高度な知識と専門性を持つ外国人を採用する企業が増えている。国は留学生の受け入れを充実させ、日本企業への就職につなげたり、企業での活躍を促す実践マニュアルを作成したりするなど、環境整備に力を入れ始めた。ただ、実際には文化や言葉の違いから、擦れ違いが生じることも少なくない。受け入れる職場は、どんな心構えが必要なのか。
日本ガイシ(名古屋市瑞穂区)で、国内外のメーカー向けにセラミックスの営業を担当している石川哲也さん(30)。普段接するのは欧米人や中国人が多く、仕事のやり方に違いを感じる場面があるという。
例えば資料作成時、石川さんが短い言葉で要点を簡潔に説明しようとすると、欧米人は「それでは伝わらない」と長い文章で説明したがる。会議では「どう思うか」と意見を求められることも。「不利になることもあり、自分の意見を積極的に言うようになった」
厚生労働省によると、国内で働く外国人労働者は約72万人(昨年10月末現在)。そのうち「専門的・技術的分野」の在留資格で働く外国人は約13万3000人と、ここ数年で伸びている。企業向けに外国人社員活用のための研修を開くジェイエーエス(東京)社長の小平達也さん(41)は「外国人社員に『日本人化』を求めていては定着しない。違いを知り、強みを引き出す仕組みや管理職の能力向上が必要」と指摘する。
互いを理解する一歩は丁寧なコミュニケーション。「どんなに日本語が堪能な外国人でも、日本人特有のあいまいな言い回しや比喩表現では通じない」と小平さん。参考例として、取引先に資料を提出する場面での会話を挙げる。
上司が部下に「至急対応しなければならないので、資料作成を進めておいて」と指示。ところが部下はどの程度急ぐのか、誰が進めるのかが分からない。さらに資料の内容に関して「(先方へ)直接の照会はいいよ」と上司が言ったとする。「紹介」か「照会」なのか、また「いいよ」では肯定か否定なのかがはっきりしない。
対応例として、締め切りの日時を示す、「照会」を「確認」に言い換え、「直接の確認はしないで」と言えばいい。相手の国の言葉に置き換えるなど、分かる言葉で丁寧に話す姿勢も時には必要だ。
外国人社員を定着させるには、評価の仕方にも工夫がいる。日本人の上司が「よく頑張っている」と褒めているつもりでも、外国人社員には伝わりにくい。小平さんは「褒め言葉よりフィードバック」と説明する。「今の発言は分かりやすくて良かった」などと、その場で具体的に評価する姿勢が求められる。
◆ニーズ面で留学生と隔たり
日本学生支援機構によると、日本の大学などで学ぶ外国人留学生は約13万8000人。国は2020年をめどに30万人に増やす計画を進める。
厚労省は2~3月、全国四都市で外国人の活用促進セミナーを開催。名古屋市の会場では、留学生と企業のニーズの隔たりが指摘された。名古屋中公共職業安定所の梶原博文次長は「タイに工場をつくるので、タイ人の理系学生がほしい」という企業の相談事例を紹介。だが、名古屋外国人雇用サービスセンターへ、14年1月末までに新規登録した留学生は684人。うち78%が中国人で、タイ人は4人。理系学生は全体の7%にすぎない。
一方、留学生は自分の能力や専門性を生かせるか、企業に厳しい目を向ける。同市内のメーカーで働く中国人の銭硯●(せんけんしょう)さん(28)は、「異国の日本で働くのは人生にとって大きな選択。採用の段階で長期的なキャリアイメージを共有できるか、本音で話せるかどうかを重視した」と話す。
法政大経営大学院の藤村博之教授は、企業の課題を「採用時に何を期待して採用するのか、外国人ならではの役割を明確にする必要がある」と指摘。「多様な人材を使って経営することが、これからの企業に求められる」と強調する。
(福沢英里)
※●は金へんに利のつくり
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