2014/01/24
就職活動をする大学生の「保護者向けセミナー」が各地で開かれている。厳しさは改善しつつあるが、子の就職は親にとって大きな関心事。何とかしてやりたいと思うのが親心だが、間違った支援は足を引っ張ることにつながる。専門家は「親が詳しくなることは必要だが、親が就職活動をしてはいけない。最後まで応援団でいてほしい」と適切な距離の確保を呼び掛けている。
「企業説明会に着ていくスーツはどんなものがよいのか」「内定後に企業から身辺調査はされるのか」
昨年末、名古屋市中区で開かれた大学生の保護者向け就職セミナー。参加した親からは、子の就職活動を少しでも有利に進められるような方法がないかと、質問が相次いだ。
企画運営したのは就職支援事業を手掛ける「ジオコス」(名古屋市中区)。セミナー開催の理由を、担当者は「学生の相談を受けていると、保護者が就職活動の実態を知らずに子どもにアドバイスし、それが学生の活動のマイナスになっている面があったため」と説明する。
「人気企業の採用数はわずかで、人数で見ると難関大に入るより難しいとも言われる。それなのにテレビCMを見ながら『ここなんていいんじゃない』と勧めたりすることがあるが、子どもの選択を狭めている」と指摘する。
セミナーで講師を務めた人材コンサルタントの常見(つねみ)陽平さん(39)によると、保護者の中には、学生を対象にした合同企業説明会に出席したり、子どもの代わりに企業に電話をしたりする事例があるという。「公務員か金融機関にしなさい」など、一方的な言葉の投げかけも「子どものやる気をそぐ」という。
「親が就職活動をするのではない。希望の会社の内定をもらっても、もらえなくても、最後まで応援するというのが役割」と強調する。
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では、保護者はどう関わったらよいのか。具体的な支援として、常見さんが挙げるのは「カネ、コネ、ココロ」だ。
就職先が遠方でも地元でも会社説明会やOB訪問、面接に参加するには交通費がかかる。かといって大事な時期にアルバイトばかりをしていられない。そこで後押しとなるのが、親の資金援助だ。
コネとは「こね入社」ではなく、さまざまな社会人との出会いの場を設けること。学生が接する社会人は、大学の教授やアルバイト先などと限定される。仕事や会社について学ぶため、親の知人を紹介してあげるのも支援になるという。尊敬できる大人から直接、仕事の内容ややりがいを聞くと学生のやる気が増す。
最後は心のサポート。面接で落ち続けると精神的な負担となる。常見さんは「学生の中には『親に愚痴が言え、相談もできて乗り越えられた』と振り返る子がいる」と紹介する。下宿している子どもに対しては電話やメールを小まめにするなど、普段からのコミュニケーションが大切だ。
セミナーに参加した大学生の息子を持つ母親は「子どものために何かできることはないかと出席したが、就職活動で親ができることは少ないと分かった」と話す。
自身も子の就職活動を経験したキャリアコンサルタントの柴田朋子さんは「親は子を心配するあまり、『子にとってよい就職』と言いながら、自分にとって安心な就職という価値観を子どもに伝えてしまいがち」と話す。
「親の苦手なことが、子どもも苦手とは限らないように、親の幸せと子の幸せは違う。信頼して子に任せることも必要」と話している。
(寺本康弘)
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