2014/01/17
大企業を中心に、結婚、出産後も働き続ける正社員の女性が増えている。両立支援の中でも、勤務時間を短縮する「短時間勤務制度」が大きく貢献しているようだ。ただ、利用者が増えるにつれ、仕事を円滑に進めるため、短時間勤務者も1人前の戦力としての活躍が不可欠に。本人が力を発揮するには何が必要なのか。先進企業の取り組みを取材した。
名古屋市中区にある三菱東京UFJ銀行名古屋本部ビルで、昨年末に開かれた管理職向けの研修。支店長ら約40人が集まり、短時間勤務制度を利用する社員のさらなる活躍のために必要な心構えを学んだ。管理職が避けたい発言はどのような内容なのか、グループで話し合った。講師を務めた三菱UFJリサーチ&コンサルティングのチーフコンサルタント根本直樹さんは、「『子どもが小さいうちは営業は難しいね』といった価値観の押し付けはNG。相手を認め、期待をかけるコミュニケーションを心がけて」と助言した。
不満を抱えやすい同僚への説明にも工夫が必要だ。「配慮は必要だが、遠慮は無用」というスタンスを共有し、「フォローのために頑張る姿を見ている」というメッセージを意識して伝える必要がある。
同銀行では「多様な人材を受け入れて、生かすことが組織の成長に不可欠」として、早くから両立支援に取り組んできた。育児休業明けで短時間勤務を選ぶ女性行員は近年、大幅に増えており、昨年3月末で約700人。うち七割が仕事のノウハウなどを蓄えた30代で、復職後なるべく早い段階での「戦力化」が大きな課題になっていた。
大規模な拠点に復職させて計画的に現場研修を実施することで、職場を離れていた間のブランクを取り戻してから、同じエリア内で転勤させる仕組みを導入。通勤時間を考慮して復職場所を柔軟に決め、短時間勤務をせずに働けるようにも整備した。ただ、どの制度も、復職する部下と上司が丁寧なコミュニケーションを図る必要があり、その方法を学ぶ管理職研修は、特に重視される。
人事部ダイバーシティ推進室の国井弘美室長は「いつまでも支えられる側ではなく、なるべく早く支える側にまわってほしいという期待を伝えるマネジメントを心がけている」と話す。
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短時間勤務の社員を集めた意見交換会を開いているのは、東京海上日動火災保険(東京)。制度利用者が励まし合う会ではなく、子育てをしながら、仕事でどう成果を挙げるかを考える。子の発熱などで急に休んだときの優先順位の付け方や、締め切りを早めに設定するなどの当事者の工夫を共有する。
広報部の宗行(むねゆき)愛さんは「制度利用者に管理職が適切な役割を与えるだけでなく、本人が制度の趣旨を正しく理解して自分の役割を発揮するのが、キャリアアップには欠かせない」と話す。
◆「推進セミナー」で討論
短時間勤務制度の利用拡大に伴う職場の悩みを解決しようと昨年11月、名古屋市内で「女性活躍推進セミナー」が開かれた。参加したのは企業の人事担当者や管理職ら約50人。「短時間勤務社員に今起きている問題」をテーマにしたグループ討論では、「営業職では難しい」「時間内に終わらず、時短勤務になっていない」などの不満の声が出された。一方、「短時間で任せられる業務がない」「異動させにくい」「周囲へのしわ寄せがある」などの本音も。そもそも「短時間勤務制度の利用者がいない」という声もあった。
では、周囲の理解を得やすい働き方はないのか。対応策として、仕事の質は落とさず、就業時間内で対応できる仕事量を設定、時間内の貢献で評価する考え方や、短時間勤務社員の時間配分だけを検討するのではなく、職場全体の取り組みとセットで行う-などの事例が示された。
講師を務めた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員、矢島洋子さんは「活躍を阻害するのは、本人の意識だけではない。管理職の意識や評価の仕組みなどにも要因がある」と指摘している。
(福沢英里)
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