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【大学生】女子大 「手に職」つけ社会へ 女性の視点や感性生かす

2013/12/24

 女子大と聞くと「華やかなお嬢さま」の姿を思い浮かべる人が多いだろう。いまだに「花嫁修業の場では」と考える人もいるかも。しかし近年は社会でばりばり働こうと、資格取得や専門知識の習得に励む学生が増えている。 (字井章人)

 ◇ ◇ ◇

 12月中旬、日が暮れた椙山女学園大(名古屋市千種区)の講義棟で、100人の学生がペンを走らせていた。来年2月に看護師の国家試験を受ける看護学部の四年生たちだ。

 1日の講義が終わった後、大学が外部講師を招いて開く試験対策講座。教室には講師の声と学生が参考書をめくる音だけが響く。

 水野亜美さん(22)は「つらい実習を乗り越えて4年間学んできた。絶対受かりたい」。武内涼さん(21)も「資格が取れたら長く働きたい。専業主婦ではもったいない」と話す。

 別の教室では、来夏の教員採用試験に挑む教育学部の3年生が同じく外部講師による対策講座に臨んでいた。

 同大の看護学部は2010年度に、教育学部は07年度に、それぞれ手に職をつけたい学生側の要望と社会の需要に応えるために同大が新設。受験生の人気は高いという。

 他学部の学生の進路も変わった。企業に事務仕事中心の一般職で就職する学生の割合は、08年に初めて50%を割り、11年は38・9%に低下。代わりに、男性に伍(ご)する総合職や営業職が増えている。

 同大キャリアサポート課は、育休や産休の法制化など女性の労働環境が整ったことに加え「女性ならではの視点や感性を求める企業が増えてきた」と説明。学生の意識も「長く働き続けるのが当たり前」になってきたという。

 岐阜女子大(岐阜市)は「女らしく」という建学の精神を守りつつ、専門的な職業人の育成に努めている。

 家政学部住居学専攻の学生は、過去に実習棟の設計や学生食堂のリフォームなど、キャンパスを生かした実践的な学びを経験する。今年9月には、1年生から3年生の38人が参加し、老朽化したトイレの改築案を競うコンペを実施した。

 最優秀に選ばれたのは、3年の時田美咲さん(22)と森本はるかさん(21)。「ガールからレディーへ」をコンセプトに、身だしなみを整えるパウダーコーナーを新設し、壁紙は大人の女性の美を表す紫色の花柄などにした。

 来年2月の着工を前に「完成が待ち遠しい」と話す2人は、それぞれ色彩検定2級や福祉住環境コーディネーター2級の資格をすでに取得。住宅業界を目指し、卒業後に2級建築士の資格も取る予定だ。

 時田さんは「結婚も育児もして仕事に戻るつもり。家族みんながくつろげる家を建てたい」と意気込む。

 指導する大崎友記子准教授は「台所の設備など、住宅を建てる際は夫より妻が決定権を持つ場合が多い。女性建築士は同じ目線で設計できる」と利点を話す。

 全国の女子大の数は、新設や短大の四年制化などで1990年代末に100校近くまで増えた。その後は共学化や統合が相次ぎ、昨年度は77校に減った。中部地方でも、愛知淑徳大(愛知県長久手市)が96年度に、中京女子大(同県大府市、現至学館大)が2007年度にそれぞれ共学になった。

 女子大の現状について、河合塾教育情報部の富沢弘和チーフは「共学化の流れは落ち着いた。資格取得に力を入れる大学の人気は堅調で、女子大の強みである面倒見の良さや安心感を求める受験生、保護者のニーズは今後も変わらないだろう」と分析する。

◆余計な気を使わない

 外からはうかがい知れない女子大キャンパスの内側を学生に聞いてみた。多いのは「すっぴんで登校できる」「ジャージーでもへっちゃら」といった声。本人にとって男子の目を気にしなくて済む利点は大きいようだ。「体育の授業は廊下でも余裕で着替えちゃう」(椙山女学園大1年)という学生もいた。

 恋愛については、出会いの少なさから「年配の先生でも格好良く見える」(岐阜女子大三年)とか「街中で若い男性グループを見ると、つい避けてしまう」(同)という笑い話が聞かれた。

 一方で「合コンの誘いは限りない。大学名だけで男子が近づいてくる」(椙山女学園大1年)と話すつわものも。「共学校と違い、学内で恋のいざこざが起きないからいい」(金城学院大2年)という意見もあった。

 ともあれ、多くの学生が「余計な気を使わず、ありのままの自分で過ごせる」と学生生活に満足していた。

看護師の国家試験に向けて勉強する学生たち=名古屋市千種区の椙山女学園大で
看護師の国家試験に向けて勉強する学生たち=名古屋市千種区の椙山女学園大で
大崎准教授㊨とトイレの改築案の細部を話し合う森本さん㊧、時田さん=岐阜市の岐阜女子大で
大崎准教授㊨とトイレの改築案の細部を話し合う森本さん㊧、時田さん=岐阜市の岐阜女子大で