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【社会】ブラック企業に是正勧告

2013/12/17

長時間労働など厚労省、4189事業所に
売り上げ減ると基本給減/月100時間以上残業

 厚生労働省は17日、過酷な働かせ方で若者らを使い捨てる「ブラック企業」対策として、情報を基に選んだ全国5111の企業や事業所に対して9月に実施した監督結果を発表した。全体の82%に当たる4189企業・事業所で長時間労働や残業代不払いなどの法令違反があり、是正勧告した。ブラック企業が社会問題化する中、違法な過重労働を強いる事業所がまん延している実態が浮き彫りになった。

 厚労省は「若者だけを対象にしたものではないが、過重労働を強いられるのは若者が多い」と分析。是正しない場合は、労働基準法違反容疑などで送検した上で社名を公表するとしている。

 監督結果によると、是正勧告を受けた事業所のうち、労使で決めた残業時間の上限を超えて働かせるなど違法な時間外労働があったのは、43・8%の2241。残業代不払いは23・9%の1221だった。

 厚労省が過労死の認定基準としている時間外労働月100時間を超えて働いた人がいるのは730に上った。厚労省は、長時間労働を減らし産業医の面接を受けさせるよう事業所を指導していく。

 業種別では、監督を実施した事業所のうち違反割合が最も高かったのは、飲食などの接客娯楽業で87・9%。次いで運輸交通業が85・5%、病院などの保健衛生業が83・6%で続いた。

 法令違反のうち、違法な時間外労働は運輸交通業、残業代不払いは接客娯楽業と建設業が最も多かった。

 監督実施に先立ち、厚労省は9月1日に全国で電話相談を受け付け、寄せられた情報や過去の違反歴、離職率の高さを基に対象を選定した。


【主な法令違反】 

◆ケース1
 正社員のうち、7割程度を占める係長職以上の労働者(半数程度が20代)を管理監督者としていたが、実態がなかった。残業の割増賃金も支払われていなかった

◆ケース2
 商品の売り上げや在庫管理状況が良くない場合に基本給を減額する制度を設け、基本給の一部が支払われない月があった。会社は始業・終業時刻を静脈認証で把握し、残業を労働者からの申請で管理していると説明したが、記録に乖離(かいり)があった

◆ケース3
 「36協定」の上限時間を超え、最長で月100時間以上の残業が行われていた。割増賃金は定額で支払われていたが、労働時間と突き合わせをしておらず、支給額が不足していた。残業・休日労働が月時間以上の労働者に医師の面接指導の実績がなかった

◆ケース4
 賃金が最大11カ月間にわたって、所定の支払日に一部しか払われていなかった。賃金の多くが払われないまま、やむを得ず働いている労働者がいた

【ブラック企業】  暴言やパワーハラスメントを繰り返したり長時間労働を強いることで若者を使い捨てにしたりするような会社。2008年に書籍「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」が出版されたことで、この言葉が広がった。厚生労働省は年春卒業予定の大学生らの雇用を希望する企業に対し、過去3年の採用者数と離職者数を求人票に明示するよう要請することを決めている。