2013/12/06
低賃金で長時間労働を強いるなど、労働環境が劣悪な「ブラック企業」が名指しで公表されて情報があふれる一方で、学生たちには「どこで働けばいいの?」という疑問が募っている。こうした不安を解消しようと、大学や国が今月1日の大学3年生の就職活動解禁を前に、具体的な企業名を挙げて、社員一人一人を大切にする「ホワイト企業」の認定を始めた。
昭和女子大(東京都世田谷区)が女子学生向けに、11月半ばに発表した銀行業とサービス業の「ホワイト企業」ランキング。「継続して働き、キャリアを向上させて活躍できる企業を選べるように」と、同大の坂東真理子学長や、同大女性文化研究所の森ます美教授らが、会社情報誌「CSR企業総覧」(東洋経済新報社)掲載企業のうち、データがそろっている銀行25社、サービス業47社を対象に分析。女性が仕事を続けることやワーク・ライフ・バランスにかかわる指標を縦軸に、キャリアや柔軟な働き方にかかわる指標を横軸にとり、掛け合わせて評価した=図。
働き方の価値観を基に3タイプに分類し、それぞれお勧め企業名を挙げた。1つ目は仕事とそれ以外のことを両立しながらバリバリ取り組むタイプ。2つ目は仕事を優先して管理職や専門職を目指すタイプ。3つ目は出産や育児をしながら仕事を長く続けることを目指すタイプ。
森教授らが「学生に勧めたい」という1つ目のタイプは、銀行業はみずほフィナンシャルグループ(東京都千代田区)やスルガ銀行(静岡県沼津市)が上位。スルガ銀行は平均勤続年数の男女差が小さい点が特徴で、入社後3年の女性定着率は業界トップという。
サービス業では、いずれの指標も通信教育最大手のベネッセホールディングス(岡山市)が1位。女性の管理職比率が高い点などが高得点につながった。同社によると、両立支援の制度を必要に応じて設計し、社員と経営の声を聞きながら進化させてきた。「男女差ではなく個人の能力に着目しており、女性優遇ではなく、男女平等の処遇をしている」という。男性の育児休業取得率も13・9%(昨年度)と、全国平均よりかなり高い。
ほかに臨床試験受託業のイーピーエス(東京都新宿区)や、広告業の電通(同港区)、総合建設業の日本工営(同千代田区)も高得点だった。
坂東学長は「大学として企業名公表はリスクを伴うが、わかりやすい情報を提供したい。学生には女性を育て、鍛え、期待してくれる企業に就職してもらいたい」と語った。一方、女性の勤続年数を公開していない企業は評価対象から外したといい、「企業はもっと情報開示してほしい」と注文した。個別企業の男女の賃金格差のデータもなく、企業選びの際の情報不足もわかった。
◆経産省も選定、表彰
経済産業省も、多様な人材が力を発揮できる企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として表彰を始めた。中でも「女性が本当に安心して働ける」25社や、そこで働く女性たちの1日のスケジュールや活躍ぶりなどは、「ホワイト企業」(文芸春秋、1,260円)で詳しく紹介。大企業だけでなく、中小企業もある。
ホワイト企業は「男女にかかわらず1人1人の社員を大切にする」会社。育休や時短などの制度が整っているのは最低条件。育児中といって特別扱いせず、適材適所で能力を発揮してもらい、ヒット商品を開発したり、業務効率を高めたりするなど、具体的な成果につなげている企業だ。同書では、企業の選び方も紹介している。
同書の監修に携わった同省経済社会政策室長の坂本里和(りわ)さんは「女性の力を活用したい企業は確実に増えている。まずは、先輩が仕事と家庭をどう両立しているかイメージを持ってほしい」と話す。
(稲熊美樹)
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