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【社会】師走の就活ラスト「広き門」業種は狭く

2013/12/02

 大学3年生の就職活動が1日、解禁され、各地で企業説明会が開かれた。安倍政権の経済政策「アベノミクス」で業績が回復している建設業などは、採用を増やしそうだが、引き続き、採用数を絞る企業は少なくない。今の3年生の内定率も「やや改善」程度にとどまるとの見方が強い。(坪井千隼)

 ◇ ◇ ◇

 現在の2年生からは、就活解禁が3年生の3月に変わるため、師走の本格スタートはこれが最後だ。

 名古屋市港区のポートメッセなごやでも、東京の就職情報会社が企画した合同企業説明会が開かれた。会場には学生1万人が詰めかけた。メーカーや金融など168社がブースを作るなどし、採用方針を説明した。学生と採用担当者が語り合う立食パーティーもあった。

 多くの学生は不安を隠せない。
 愛知学院大3年、中嶋孝輔さん(20)は「今も内定をとれず焦っている4年生がいる。自分も心配です」と漏らす。名古屋学院大3年、神門亜耶さん(20)は会場が開く2時間前に入り口に並んだ。「希望する会社の説明を1番前の席で聞きたかった」と臨戦態勢だ。

 アベノミクスによる公共事業の増加や、東日本大震災の復興需要などで人手不足が続く建設、土木業は人材確保に躍起。矢作建設工業(名古屋市)の高橋輝明人事課長(38)は「前年度の採用も大幅に増やしたが、今回もさらに増やす」と鼻息が荒い。

 一方で、自動車部品設計開発業「アイシン・エンジニアリング」(愛知県刈谷市)の担当者は「即戦力は中途採用で補う。新卒採用は前年度並みになりそう」と語った。

 説明会を企画した就職情報会社「ディスコ」が7月に実施した企業の意向調査によると、回答した約1200社のうち、採用を「前年並み」とした企業は53%。「増やす」が12%、「減らす」は4・7%。ここ数年同様、内定率は改善すると予想されるが、劇的な上昇にはならない見込み。

 製造業などの海外移転が続き、日本人の採用を抑制する流れは変わっていないことが背景にある。ディスコの坂戸隆文取締役(50)は「内定率が、2008年のリーマン・ショック前の水準に戻ることはない。企業の厳選採用の姿勢は変わらないだろう」と語った。

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◆「好況」楽観は禁物
◆大学、学生に警告

 就職活動を支援する大学側も、求人増を見込むものの、大幅なアップまでは期待できないとみる。

 南山大で就職支援を担当する石川良文教授は「今年以上に求人はある」と見通しつつ、楽観はしていない。「来年の消費増税で消費が冷え込めば、また採用意欲は逆戻りするだろう」

 石川教授は、今の3年生には、就職を楽観しすぎている学生もいて、心配という。「アベノミクスだから好況、と思いこみ、のんびりしているのかもしれない」

 椙山女学園大キャリアサポート課の石橋法久課長補佐も「企業の厳しい視線は変わっていない」とみる。 「しっかり準備していくつも内定を取る学生と、のんびりしていて内定が取れない学生の二極化傾向は今年も続く」と話している。(北島忠輔)

【大学生の就職活動の日程】
 経団連は採用や選考の指針に当たる「倫理憲章」で、会社説明会など企業の「広報活動」を3年生の12月1日以降と定め、就活の解禁日としている。面接など「選考活動」は4年生の4月1日に解禁され、正式な内定は10月1日。2016年春卒の現在の2年生からは、就活開始が3年の3月、選考開始が4年の8月に繰り下げられる。内定の解禁は現行のまま。

合同企業説明会の立食パーティーで企業の採用担当者と語り合う学生ら=1日、名古屋市港区のポートメッセなごやで(浅井慶撮影)
合同企業説明会の立食パーティーで企業の採用担当者と語り合う学生ら=1日、名古屋市港区のポートメッセなごやで(浅井慶撮影)