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ただ今就活中/堅実化する芸大生 専攻外の業種も視野に

2013/11/26

 大学を卒業して就職するのは、経済学部や工学部の学生だけではない。芸術を学ぶ芸大や美大の学生たちも同じだ。芸大生といえば、就活とは無縁で芸術の道に進むイメージがあるが、近年は企業で技能を生かしたり、仕事の合間に創作を続けようと考える堅実な学生が増えているようだ。

 名古屋造形大(愛知県小牧市)イラストレーションデザインコース3年の小坂井翠さん(21)は「卒業してすぐにプロのイラストレーターとして食べていける人はほとんどいない。私も児童福祉施設に就職して、休日を創作に充ててコンペに応募したい」と話す。

 グラフィックデザインを学ぶ3年石川健太郎さん(21)は広告制作会社への就職を希望。「大学で学んだ技量と経験には自信がある。自分の作品を企業に評価してもらいたい」と意気込む。ただ、「デザイン関連の職種の待遇がよくないと聞いて、全く関係ない業界を視野に入れる友人も少なくない」という。

 同大就職指導室は「就職せずに創作を続ける学生はかなり減った。リーマン・ショック後は特に進路に対する保護者の関心が高まり、手堅い学生が増えた」と説明。学生には卒業生の実績を示して「専攻と関係ない一般企業にも十分就職できる」と指導している。

 大学側は1年次からキャリアデザインの授業を実施。3年生には新聞の活用法を教えるなど、一般の大学と同様の支援を行っている。

 名古屋芸術大(同県北名古屋市)でも事情は同じ。学生支援課は「学生本人も保護者も就職への意識と関心が高まっている」といい、キャリアガイダンスや自己分析の指導、模擬面接といった支援を強化している。

 プロ志向が強い愛知県立芸術大(同県長久手市)の卒業生は、就職と、留学・進学、フリーで創作を続ける人の割合がほぼ3分の1ずつ。同大の場合、デザイン事務所などから求人は年間を通してあるが、専攻であくまで芸術家を育てようと指導に当たる教員が少なくないため、就職希望を教員に言い出しにくい学生もいる。就職担当部署には、創作活動と仕事が両立できるか悩む学生からの相談が毎年あるという。

11月中旬に開かれた名古屋造形大の就職対策講座。多くの3年生が参加した
11月中旬に開かれた名古屋造形大の就職対策講座。多くの3年生が参加した