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【経済】新規就農ノウハウ指南 TPP交渉参加で人材サービス会社

2013/08/17

東京のイベントに学生ら1400人

 日本が正式に参加した環太平洋連携協定(TPP)交渉をにらんで国内農業強化への関心が高まる中、大手人材サービス会社が就農希望者の支援強化に乗り出した。販売先の開拓などのノウハウがないまま就農して失敗するケースもあるため、農業法人などへの就職を取り持っている。基礎的な知識や技術を学ぶ機会も用意して「壁」を低くし、新規就農者の増加を後押しする。

 ◇ ◇ ◇

 7月20日にリクルートグループが東京・池袋の大型商業施設で開催した学生などが対象の就農イベント。希望者が気軽に会場に入れるよう「服装自由」をうたったことからTシャツで参加する人もあり、スーツ姿が並ぶ見慣れた就職活動の風景とは異なる雰囲気に包まれた。

 イベントには農業法人や自治体など約130団体が出展し、生産の担い手や営業職などを幅広く募集した。中には「社長募集」を掲げる農業法人も。ある農業法人の採用担当者は「販路の拡大が課題。東京で営業経験のある即戦力を見つけたい」と語った。

 福井市で農業法人を営む義元孝司さん(62)は「経営感覚を持って農業ができる人がほしい。将来は事業を継いでもらっても構わない」と求める人材像を話した。

 会場にはリクルートの予想を上回る約1400人が訪れた。埼玉県の短大生、太田譲さん(19)は「やり方によっては、もうかる農業ができると思う。話を聞いて一段と農業に携わりたいと感じた」と話した。

 リクルートは「就農への関心は高い」と判断、事業拡大の具体策を検討する方針だ。

 一方、パソナグループは、同社が借りた農場で最大3年間にわたり給与を得て働きながら、独立に向けて栽培技術などを学んでもらう事業を2008年にスタートさせた。現在は兵庫県淡路市と栃木県芳賀町で野菜などの栽培や関連食品の製造、販売を行っている。

 今後さらに、農業経営や野菜の栽培方法などについて専門家から本格的に知識を習得できる新しい事業を東京で展開する計画だ。

【新規就農者】
 生産者の高齢化が進む中で、国内農業の拡大には若年層の確保が不可欠となっている。ただ基礎的な知識や技術のない人が新たに農業を始めて軌道に乗せるのは難しく、歳以下の新規就農者のうち3割が5年以内に離農している。こうした状況を踏まえ農林水産省は2013年度に、所定の条件を満たした新規の就農者に年150万円を給付する事業などの予算として239億円を計上し、定着率向上を目指している。