2013/08/19
静岡大付属静岡中
静岡市で7月下旬に開かれた第18回NIE全国大会の分科会では、静岡大付属静岡中学校の3年A組の公開授業も参加者の関心を集めた。
テーマは「新聞をきっかけに考える『正社員になりたい』~雇用の在り方と日本の未来」。社会科の「公民」の授業で、生徒が働くことに対し自分なりの思いを持ち、表現することを目標に、初回の学習として新聞記事を取り上げた。
担当した野沢康夫教諭(43)が、クラスの38人にまず示したのは、派遣会社から突然解雇された男性の体験を紹介する昨年9月の記事だ。
「選ばなければ仕事はある」という男性の当初の考え方に、生徒たちは仕事選びの難しさを実感し、「安定した仕事を望むなら選ばなければ」などと述べた。
次に読んだのは、派遣社員を活用する会社が増えたと伝えた1997年3月の記事。「派遣はマイナスのイメージしかなかったけど、自分に合う仕事が選べる」と女子。「人員削減の対象になりやすい面がある」と現実を見詰める男子もいた。
この授業は、今回の大会テーマ「やさしいNIE」を受ける形で行われた。実践する教師にとっては、自分が気になった記事を生徒に紹介するのはやさしい。生徒も、新聞記事を読んで考えたことを表現するのはやさしいというわけだ。このため、野沢教諭は題材にふさわしい記事を図書館で検索し選び出した。
公開授業は、生徒たちが2つの記事から何を考えたのかを書くことで締めくくった。「2つの記事の15年の間に派遣に対する考え方が変わったと思った。最近は安定した仕事をとる人が多いと思う」と、社会の移り変わりを冷静にとらえた生徒。「学生時代にやりたいことが定まっている人は少数。派遣しながらやりたいことを見つけていってもいいと思います」と、現実の自分たちを顧みて導き出した主張も。
さらに「自分の道を探すための教育が、非正規労働者を減らすもとになるのではないか」と、学校教育にまで言及した生徒もあった。
公開授業について、野沢教諭は「教師はつい教えたくなるが、生徒が記事を読み自ら思いを持つことを大切にした。自分のこととしてとらえた子や派遣という働き方を考えた子など、みんな自分なりの思いを持った」と振り返った。
(川本公子)
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