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【暮らし】女性の再就職、細やかに支援 マザーズハローワーク

2013/08/09

 結婚や育児などを理由に、いったん退職した女性たちの再就職を支援する「マザーズハローワーク」。相談を受ける担当者を固定する制度を導入してきめ細かに接し、この制度を利用した人の就職率は全国平均で86%に上る。どんな支援を受けられるのか、取材した。

 ベビーカーに赤ちゃんを乗せたり、小さい子の手を引いたりした女性たちが訪れるJR名古屋駅近くの「あいちマザーズハローワーク」(以下、あいち)。奥のキッズコーナーには、担当者が常駐。おむつ交換や授乳ができる場所もある。ベビーカーを隣に置いて相談できるスペースもあり、子どもの預け先がない人も利用しやすい環境が整っている。

 マザーズは子育て中の女性などの再就職を支援する目的で、2006年度から国が専門のハローワークとして設置。現在、東京や名古屋など13カ所にある。県庁所在地などのハローワークには「マザーズコーナー」も開設し、本年度中に全国164カ所になる予定。

 厚生労働省によると、利用者(新規求職者)は、昨年度が21万人。就職できたのは6万9千人で約33%だった。このうち、母子家庭の母は4万100人が利用し、1万5000人が就職した。

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 マザーズの大きな特徴は「就職支援ナビゲーター」と呼ばれる相談員に継続的に相談できること。あいちでは、この制度を利用した場合の就職率は約85%。木下節男次長は「意欲の高い人が利用しており、職業紹介の数が多いため」と分析する。

 訪れる女性の事情や不安はさまざま。ナビゲーターに「子育てで数年間働いていない。職務能力が下がっていて不安」「子育てと家庭を両立できるか」「専業主婦だったが、離婚したのですぐに働きたい」といった相談が持ち掛けられる。

 こうした状態から、週に1時間ずつ相談に乗り、約3カ月で就職を目指す。ナビゲーターの波多野彰子さんによると、書類選考で落ちると「自信のない人がずたずたになり、再び活動できなくなってしまう」ので、書類の書き方から丁寧にアドバイス。専業主婦の経験や強みを職務経歴書でどう表現するか、1人1人に合わせて考えていく。波多野さんは「一緒に考えていくプロセスが大切」と話す。

 応募先選びもポイントだ。マザーズには「子どもの病気による突発的な休みに理解がある」など、子育て中の従業員に一定の配慮をしている企業の求人が集まるようになっている。ただ、正社員での就業希望は多いが求人は少ないので、パートタイマーも視野に考える。ナビゲーターの梶川則子さんは「少しずつウオーミングアップを。短期と長期の目標を立てて」と話す。

 厚労省の21世紀出生児縦断調査によると、出産1年前に常勤で就業していた母親は32・6%だが、出産半年後に16%に低下。9年後になると18・3%となり、少しずつ常勤の割合が増える。

 ナビゲーター利用の希望者は多く、あいちはほぼ毎日予約でいっぱい。厚労省の担当者は「もっと人を配置できればいいかもしれないが、予算の制約がある」と話す。

 このほか、マザーズではパソコンやビジネスマナーなど、実践的な講座を開く。託児はあるが、あいちでは託児分の定員はすぐ埋まってしまう。保育所に入りたくても入れない待機児童が多く、求職中は入所させるのが難しいからだ。ハローワーク内の部屋を託児スペースとして使うが、限界があるという。

◆潜在求職者は300万人以上
就業希望女性の数

 総務省の2012年度労働力調査によると、現在就業しておらず、就職活動をしていないが、就職を希望する女性は、30代を中心に303万人いる=グラフ。

 内閣府の男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会は、昨年とりまとめた報告書で「女性の就業希望者の就業によって、労働力人口が5%増加し、国内総生産(GDP)が1・5%程度上昇する」との試算を公表している。(稲熊美樹)

あいちマザーズハローワークの一角。相談スペースは個別の仕切りがあり、キッズチェアも準備されている=名古屋市中村区で
あいちマザーズハローワークの一角。相談スペースは個別の仕切りがあり、キッズチェアも準備されている=名古屋市中村区で
就業希望女性の数
就業希望女性の数