2013/07/27
米良はるか 25歳
夢の実現手助けしたい
福島県会津若松市に伝わる会津木綿を使ったピアスがひそかな人気を集めている。キャンディーのような「ふくいろピアス」を耳につけ、福島の声に耳を傾けて-。地元出身の日塔(にっとう)マキ(30)が企画した。
県内で働いていた日塔は東日本大震災後、関東へ避難。だが、故郷について流布するのは負のイメージばかり。「福島の魅力を発信しよう」と、帰郷。昔ながらの自動織機で織られた会津木綿でアクセサリーを作ろうと思い付いた。
でも、資金をどうしよう? 見つけたのが「レディフォー」(READYFOR?)だ。米良はるか(25)が2年前に始めたサイト。大衆からの資金調達を意味する「クラウドファンディング」の仕組みを活用する。
「だれもが自分のアイデアを実現できる。そんな社会をつくりたいんですよ」。米良は目を輝かせる。
個人が事業を始めようとすれば、銀行に融資を申し込むのが普通だが、銀行員が採算に合わないと判断すればそれで終わり。
「レディフォーはアイデアを実現したい人が構想をサイトに掲載し、1口出資を募ります。多くの人が『これは実現してほしい』と共感すれば、お金が集まり事業が実際にスタートできるのです」
日塔のピアスの計画には137人が出資、目標額を超える125万円が集まり、事業が滑り出した。出来上がったピアスなどが出資者へのお返し。ピアスは若い女性に人気で、2カ月で1500個が売れ、今も好調。
米良がレディフォーをつくったのは大学4年生の時、障害者ノルディックスキー日本代表監督の荒井秀樹(58)との出会いがきっかけだ。「スキー板用ワックスの購入にも困る状況を知り、仲間と寄付サイトを作り100万円を集めました」。チームは冬季パラリンピックで金メダルを取るなど活躍。その後、米国に短期留学した米良はクラウドファンディングを知り、帰国後すぐ知人のIT技術者らと、日本で初めてこの仕組みを取り入れたサイトを立ち上げた。集まる資金の17%を手数料として受け取り、運営費に充てる。
お金を集めた事業はこれまでに320件超。調達総額は2億円に上る。「震災被災者の住む仮設住宅に図書館を」という計画から「囲碁のイメージを一新するため斬新なデザインの囲碁セットを作る」「東山動物園のコアラを増やすため、えさ代を集める」など多くの人の独創的アイデアが現実になった。
米良は今、ネットの世界を飛び出し、サイトを使ってもらおうと各地で体験講座を開く。高齢者も高校生も自分の夢を模造紙にフェルトペンで書き発表する。
「みんなやりたいことがあるのに、あきらめてしまっていた。だれもが世界に向かって夢を発信して実行者になる手助けをしたいのです」(藤川大樹、敬称略)
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めら・はるか 東京都生まれ。慶応大経済学部を卒業後、同大大学院メディアデザイン研究科。現在、IT会社「オーマ」取締役を務め、「レディフォー」の責任者を兼務する。
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【クラウドファンディング】
インターネットで不特定多数から1口募金的に出資を募る仕組み。出資者は見返りに配当や商品を受け取る。調達規模は2012年に世界で約2800億円だが、日本では数億円程度。
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