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【経済】技能五輪 金メダル数3連敗

2013/07/24

日本 韓国の背遠く

 ドイツ・ライプチヒで今月上旬に開かれた技能五輪国際大会で、トヨタ自動車やデンソーなどから出場した日本勢の金メダル獲得数は5個にとどまった。首位・韓国の12個に大きく離され、3連敗となったばかりか、20年ぶりにベスト3入りを逃した。「モノづくり復活」に向け、日本はこの結果をどう受け止めるべきか。(太田鉄弥)

 ◇ ◇ ◇

韓国/国を挙げて支援

 ■通常兵役免除
 「誇らしい快挙を国民と祝福する」。大会直後の8日、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は、金メダル数で国・地域別首位の結果に、すかさず祝福のコメントを出した。

 贈られるのは賛辞だけではない。メダル獲得者には2240万ウォン(199万円)~6720万ウォン(598万円)の報奨金が出る。さらに徴兵制度でも、特別な技能を持つ「産業技能要員」として通常の兵役が免除される。

 韓国選手たちはサムスン電子や現代自動車など、所属する大手メーカーで腕を磨く。学生の選手も、国の熟練技術振興センターで訓練を受ける。

 今大会で韓国勢は「溶接」「構造物鉄工」といった製造業系の競技から、花束やブーケを作る「フラワー装飾」、ケーキの装飾を競う「洋菓子製造」など非製造業系の競技まで、まんべんなく金を獲得。金メダル数で首位になったのは16回目で、日本の8回を大きく上回る。

日本/トヨタなど企業頼み

 ■技の伝承大切
 日本は練習費やコーチ謝金、渡航費などに対して、厚生労働省が年間2億円余の予算を計上しているものの、国の専用施設や報奨金制度などはない。今回、韓国よりも多い40競技に出場しながら、10競技で入賞に届かなかった。

 社内に訓練校を持って若手従業員を組織的に養成しているトヨタやデンソーなどの選手の入賞率が高く、金メダルも「自動車板金」「プラスチック金型」などで獲得。それ以外の競技では、所属の専門学校や中小企業で独自に練習を続けるしかない。

 ただ、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ社長)は「メダル数だけに注目してはいけない。匠(たくみ)の技の伝承こそが大切」と、技能五輪の意義を強調する。

 ■国内との違い

 そもそも国際大会と国内大会では、種目によっては競技方法や狙いが違うことがある。例えば「CNC旋盤」の競技。国際大会では半自動式の機械を使うが、日本の国内大会では既に現場で使われない手動式で競う。

 国内大会を運営する中央職業能力開発協会は「においや音で機械操作の加減が分かってこそ、新しい技術も生み出せる」と説き、手作業での技能伝承に重きを置く。

 韓国にも課題はあるらしい。選手らにはホワイトカラー志向が強く、「せっかくメダルを取っても現場を離れて事務職に進んでしまう」(関係者)。技能が実社会に定着するかどうかは、別問題のようだ。

【技能五輪国際大会】
 原則2年ごとに開催され、22歳以下が出場する。今回のドイツ大会は52カ国・地域から986人が46競技に参加。日本は金5個、銀4個、銅3個だった。日本では就業能力を高める目的で、厚生労働省が所管する。次回は2014年11、12月に愛知県で開かれる国内大会の各競技優勝者が、15年8月のブラジル国際大会に進む。

社内に訓練校を持つデンソーからは7人が4競技(団体戦含む)に出場し、全員がメダル(金1、銀2、銅1)を獲得した=ドイツ・ライプチヒの会場で(デンソー提供)
社内に訓練校を持つデンソーからは7人が4競技(団体戦含む)に出場し、全員がメダル(金1、銀2、銅1)を獲得した=ドイツ・ライプチヒの会場で(デンソー提供)