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【愛知】管制官の卵 飛躍期す 中部空港で3人が実習

2013/06/28

 国土交通省の中部空港事務所(常滑市)へ4月に新規配属された「管制官の卵」の男女3人が、管制塔での実習に奮闘している。特に離着陸のタイミングなど旅客機との交信に四苦八苦。1人前になるまで2年近くかかるという。中部の空を舞台にした訓練生活は始まったばかりだ。

 「WAJ866 cleared to land(エアアジア866便、着陸を許可します)」

 管制室で、ヘッドホンとマイクが一体となった通信機器「インカム」を着けた駒野義一さん(28)=千葉県出身=が、上空や滑走路の状態を目視しながら、北の名古屋港方面から接近してくる韓国・仁川-中部便に無線で指示した。実習の一環で、すぐ後ろでは先輩の女性管制官が様子を見守った。

 他に配属されたのは、中嶋博之さん(26)=新潟県出身=と、石井未来さん(24)=群馬県出身。競争率20倍近くの採用試験を突破し、航空保安大学校(大阪府)で1年間、基礎知識を学び、中部空港に来た。

 駒野さんは、福岡県内の輸入雑貨店の販売員だったが、出張で飛行機に乗るうちに空の安全を支える管制官に関心を持つようになった。「人の知らない所で、歯車となって働く職人的な仕事をしたくなった」。採用試験に一度落ちたが、家業の水道修理業を手伝いながら猛勉強し、2度目で合格を勝ち取った。

 3人は勤務日に1日6時間、管制塔で実習を受ける。指示や天候を伝えるのも全て英語。離着陸機で滑走路が混雑する時間帯になると、同時に何機もの飛行機を制御する必要があり、離陸のタイミングなどで難しい判断を迫られる。中嶋さんは「自信がなさそうな声色で指示を出したら、相手から再確認を求められた」と失敗談を話す。

 旅客の生命を守るという重圧を抱えながら、充実感もある。石井さんは離陸機の安全を確保するため、着陸体勢に入った航空機へ減速を要請し、減速したパイロットに感謝の言葉を伝えると「ウエルカム」の返事が戻ってきた。パイロットと管制官の信頼感に「感激した」と明かす。

 3人は今後、訓練を積みながら、レーダー使用の業務などに関する3種類の試験に挑む。全てに合格し、独り立ちするためには配属から平均1年8カ月かかるという。

 石井さんは話す。「今は自分のことで精いっぱいだが、パイロットと乗客の気持ちを考え、安全と快適さを両立できる管制官になりたい」(安田功)

管制塔で訓練を受ける(左から)中嶋さん、石井さん、駒野さん=常滑市の中部国際空港で
管制塔で訓練を受ける(左から)中嶋さん、石井さん、駒野さん=常滑市の中部国際空港で