2013/05/02
高齢者雇用が圧迫も
法改正で義務付け 1割が「新卒抑制」
中部の主要企業128社を対象に、本紙が行った採用アンケートでは、「アベノミクス」による景気回復の効果は、まだ反映されていない。企業に対する高齢者雇用の義務付けや、就職活動の期間がいっそう短縮されることへの戸惑いもみられた。また、大半の企業が、採用の際、コミュニケーション能力を重視して選んでいることが明らかになった。(石井宏樹)
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製造業を中心に一部の企業で来春の新卒採用が抑えられる背景には、4月に施行された改正高年齢者雇用安定法で、65歳までの希望者に働く場を確保するよう企業が義務付けられたこともある。
政府は年金支給の開始年齢の引き上げに合わせ法を改正。これに伴い「新卒採用を抑制する」と答えた企業は10・9%の13社で、このうち10社は製造業だった。部品加工の細かなノウハウなど技能の継承に時間がかかる場合が多く、高齢者雇用の拡充が新卒採用を圧迫するジレンマを生む結果となった。
新卒採用を減らす企業の中には「定年再雇用者の活躍の場を広げる」(鉄鋼・金属)、「法改正による総員見通しの変化に合わせる」(化学・ガラス・土石)と法改正の影響に触れる声もあった。
法改正へは、83・7%が「対応済み」と回答。従来の再雇用制度を希望者全員が利用できるようにする企業が多かった。
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◆就活期間短縮に戸惑い
学業優先のため、政府は4月、大学生の就職活動の解禁を、現在の3年生の12月から3月に遅らせるよう要請。経団連など経済3団体が了承し、2016年春の採用から適用される。アンケートでは、就職活動の期間短縮に「反対」が21・2%と、「賛成」の16・1%をやや上回った。ただ「分からない」が62・7%を占め、大半の企業は判断しかねているようだ。
賛否の理由について、賛成企業は「学業に専念する期間が長い方が学生にとってよい」(電気機器・精密)など学生側の負担軽減をメリットに挙げる。一方、反対企業は「学生が企業や業界を理解する期間が短くなる」(自動車・部品など)と就職のミスマッチを心配。法律上の拘束がないことから、「賛同しない企業は早くから採用を始める」(金融)と、抜け駆けへの懸念もみられた。
就職活動の解禁が現在の12月となったのは、13年卒業の大学生から。従来より2カ月遅くなり、30・1%の企業は、影響が「あった」と答えた。「なかった」は69・9%。
具体的な影響としては「学生の企業研究不足で、知名度優先の選び方になった」(卸売り・サービス)や「説明会の日程が集中し、人事担当者の作業に無理が生じた」(建設)などの弊害が挙げられた。
さらなる就職活動期間の短縮について「12月に遅らせたばかりで、企業や学生の混乱が予想される」(金融)との声もあった。
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◆資格より「やる気」重視
新卒者の採用にあたって重視する点を複数回答で尋ねたところ、82・1%の企業が「コミュニケーション能力」を挙げ、「チャレンジ精神」が59・3%、「行動力」が46・3%で続いた。企業が、意思の疎通がしやすく、やる気のある人材を求めていることが分かった。半面、「責任感」は15・4%、「忍耐力」は14・6%にとどまり、「成績」や「特技・資格」はほとんど選ばれなかった。
共立総合研究所の江口忍副社長は「若い世代とコミュニケーションが取れずに困っているという話はよく聞く。国際化が進む中でも、協調性を重視する日本企業的な感覚が残っている」と分析。チャレンジ精神が高い割合を占めたことには、新規事業の開拓や海外進出が進んでいる背景に触れ「新天地に飛び込んでいける人材を求めている」と指摘した。
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