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【暮らし】<はたらく>1人で悩み辞職悔やむ

2013/04/12

「パワハラ」の本欄記事に反響

 3月1日本欄で、職場のパワーハラスメントについて、国が昨年3月に示した概念や典型的な行為を紹介したところ、「パワハラの定義を正しく知らなかった」など、多くの声が読者から寄せられた。パワハラと指導の境が分からず悩む声や、家族の職場環境を心配する声も多かった。その一部を紹介する。 (福沢英里)

■仕事与えられず
 「パワハラとは言葉の暴力や過剰な説教というイメージだった。無視、隔離といった行為もパワハラと初めて知った」。システムエンジニアとして約30年、複数の職場で働いてきた東京都内の男性(48)は話す。

 昨年5月、通信会社の故障受け付けシステムを開発する仕事を請け負った。だが、数カ月たつと発注先から作業費が出なくなり、仕事がなくなった。あいさつをしても周囲に無視され、会議にも1人だけ呼ばれない。ネットもメールも使えなくなり、1日8時間を通信会社でボーッとして過ごすだけ。

 「日々自分が壊れていく感じ」がして、精神的に不安定になり、今年2月に仕事を辞めた。専業主婦の妻と大学生の長男との3人家族で住宅ローンも残っているため、心療内科に通いながら職探しを続けている。

 厚生労働省が示した典型的な行為=表=によると、男性が職場で受けた扱いは、(3)の「隔離・仲間外し・無視」や(5)の「仕事を与えないこと」に当たる。男性は「仕事がなくなり、辞めてもらいたかったのでは」と振り返る。同時に「もっと早く知っていれば、辞める前にどこかに相談できたかも」と、悔やむ気持ちも吐露した。

 以前勤めていた別の職場では、月150時間を超す残業や、1人で不可能な作業も押しつけられたという。一方、男性は後輩をきつくしかった過去を思い出した。思いやりで指導したつもりだが「気付かないうちに加害者になることもある。1人1人が気を付けるしかない」とも話した。

■守ってくれない
 念願のブライダル業界に昨春、就職した娘を持つ愛知県内の主婦(51)は「パワハラを決して許さないという毅然(きぜん)たる職場環境を切に望む」とつづった。娘は直属の上司による無視や仲間外れ、長時間に及ぶ説教、辞職を迫る言動が毎日のように続いたといい、2カ月もたたないうちに、うつ病を発症した。

 先輩や他の上司にも相談したが、「もっとひどいパワハラに耐えたから今がある」「今の若者はすぐにパワハラと騒ぎ立てる」などと言われ、守ってもらえなかった。うつの原因は「意志が弱いから」と、まるで本人に問題があるかのような考え方がまかり通る職場環境で、娘は心身ともに壊れ、先月退職を余儀なくされたという。

■教育の現場でも
 東海地方の私立大に勤める女性からは「仲間外れなどのパワハラは企業だけでなく、教育現場でも起こっている」とのメールが寄せられた。

 この大学では定員割れを防ぐため、文部科学省の勤務経験者が本部へ配属された。ところが、この人物は気に入らない職員がいると、暴言や脅迫などのパワハラ行為を繰り返した。その結果、3月末で退職する教員や職員が増えたという。

 女性の場合は、学内にある教職員の委員会メンバーから外される嫌がらせを受けた。「これが学生を教育する人間のすることでしょうか。学校のためなら、自分の言う通りに動く人間を置き、自分の思うように行動しても許されるのでしょうか」