中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【岐阜】高齢者雇用取り組みを本に 60歳以上限定で求人

2013/04/10

中津川の加藤製作所社長
「働く喜びを学んだ」

 高齢者雇用への取り組みで知られる中津川市駒場のプレス板金部品メーカー「加藤製作所」の加藤景司社長(51)が、社員の声やこれまでの歩みを著書「意欲のある人、求めます。ただし60歳以上」(PHP研究所)にまとめた。高齢の社員に「働く喜び」を学んだといい、力を生かすことの大切さを強調している。

 著書の冒頭、70代の女性社員が登場する。プラスチック加工などの仕事に携わって定年退職した後、2001年に入社。週4日、ねじ穴加工などを担当する。「仕事にいくのが楽しみで仕方ないんです」

 加藤製作所が高齢者雇用を始めたのは01年。工場の稼働率を上げる一方、コスト削減を図るため、土日のみ勤務する従業員の採用を検討。働きたくても働けない高齢者が多くいることを知り、60歳以上限定の求人広告を出した。

 現在は全従業員104人のうち、60歳以上は50人に上る。11年には、企業の社会貢献活動を支援する公益社団法人「日本フィランソロピー協会」から特別賞「人財ハーモニー賞」を受けた。

 著書では、苦労した経験も取り上げた。専門用語を覚えてもらうまでには時間が必要。仕事の手順を忘れるケースもあった。若手社員が支援したが、本人も努力した。やがて、若手から平日勤務も求められるようになったという。

 「働いているときが、ほんとうに生きているとき」。加藤社長は、高齢者雇用を始めてそう実感したという。「『生きる喜び、働く喜び』を教えていただいた」

 高齢化が進む日本についても、高齢者の増加ではなく、国の活力を失うことが問題だと指摘。高齢者が生き生きと働けば、若者も刺激を受けると説く。

 加藤社長は、著書50冊を市内の小中学校や図書館に寄贈した。「働くことは素晴らしいと子どもたちに分かってほしい」と話している。221ページ。1,470円(税込み)。 (平野誠也)

高齢者雇用の取り組みを本にまとめた加藤製作所の加藤景司社長=中津川市役所で
高齢者雇用の取り組みを本にまとめた加藤製作所の加藤景司社長=中津川市役所で