2013/03/29
中学生のときから災害ボランティアグループで活動してきた名古屋市中川区高畑の惟信高校3年、宇賀谷仁充(ひとみ)君(18)が4月に東京消防庁の仕事に就く。火事や事故現場に出動する業務を志望してきたが、東日本大震災を機に考えが変わった。「発生してからではなく、起きる前に命を救いたい」。裏方とみられがちな予防や防災の部門を目指すという。
消防士の奮闘を描いた米ハリウッド映画「バックドラフト」に心を奪われたのは幼稚園のときだった。中学1年で、当時住んでいた昭和区の災害ボランティアグループに加わった。
中川区に引っ越してからは「名古屋なかがわ災害ボランティアネットワーク」へ。高校生ながら市民向けの防災や応急処置、災害図上訓練の講座で講師として活躍した。消防署に入ったらすぐに一線で活躍するため、まずは専門学校で救急救命士の資格を取るつもりだった。
震災が起き、「1人で救える命には限界がある。起きる前に先手、先手で少しでも多くの命を救いたい」と思うように。小中学生のほとんどが生き延び、メディアが報じた「釜石の奇跡」にも違和感があった。「奇跡なんかじゃない。やるべきことを事前にやっていた当然の結果」と感じたという。
「いつまた大地震が起きるか分からない」との考えから、高校卒業後の進路を専門学校への進学から、消防職員に切り替えた。2年生の終わりに陸上部をやめて予備校に通った。昨年9月、市の消防職員の試験には落ちたものの、都の試験を見事、パスした。
4月、まずは都の消防学校に半年間入校する。「まだ消防の組織に入れただけ。1日でも早く防災の現場で働けるようにがんばらないと」。宇賀谷君にとって夢はまだ半ばだ。
(多園尚樹)
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