2013/02/18
11年 5年で4割増 雇用低迷響く
20~59歳の働き盛りで未婚、無職の男女のうち、社会と接点がない「孤立無業者」が2011年時点で162万人に上るとの調査結果を、玄田有史・東大教授のグループがまとめた。景気低迷に伴う就職難やリストラなどが響き、06年(112万人)と比べて4割強増えた。
職探し中の孤立無業者は半数にとどまり、事態改善に向けた動きは鈍い。玄田教授は「孤立に陥ると職探しへの意欲が失われがちだ。今は家族が支えても将来、経済的に厳しい状況に陥る」と指摘。生活保護費など社会保障費の増加を抑えるためにも、訪問支援など政府や自治体による対策が急務だと訴えている。
玄田教授のグループは29~50代の未婚男女で仕事も通学もせず、無作為に選んだ連続2日間ずっと1人か、一緒にいたのが家族だけだった人を「孤立無業者」と定義。5年に1度「社会生活基本調査」を実施する総務省から、調査の回答の一部提供を得て独自に集計した。未婚で仕事も通学もしなかった人は11年時点で256万人おり、このうち孤立無業者は162万人だった。
政府は15~34歳で、通学も仕事も職探しもしていない人を「ニート」(12年平均で63万人)と位置付け、カウンセリングや就職支援を実施してきた。一方、就職難でニートの高齢化が進行。無職で社会から孤立している30代半ば以上の人の実態把握や支援が新たな課題となっている。
知人や友人がいないと社会復帰や就職が難しい。玄田教授は「相談員による自宅訪問やカウンセリングなどによる就労支援が必要だ」と指摘している。
文部科学省・日本学術振興会から委託を受けた雇用システムの研究(08~12年度)の一環として玄田教授らが調査した。
◆職探しの意欲乏しく
「孤立無業者」は職を探す意欲も乏しいのが特徴だ。社会と接点がない「孤立」の中でも、同居するなどして家族とだけはつき合いがある人は特にその傾向が強い。生活費を依存できるためとみられる。
調査によると、仕事をしていない「無業」のうち仕事を探している人の割合は、友人、知人らと接触がある場合は63・5%。しかし「孤立無業者」は52・9%と10ポイント以上低くなる。中でも家族と接点がある人は51・0%。一方、1人でいる人は経済的自立を迫られるため59・7%が職探しをしていた。
孤立無業者の中には学校卒業後、就職がうまくいかず数十年にわたって引きこもり、両親と同居を続ける場合がある。かつて働いていたが、過疎地に住む両親の介護などのため離職、帰郷を迫られ、再就職の機会や意欲を失ってしまった人もいる。調査をまとめた玄田有史東大教授は「両親の年金などに家計を依存する孤立無業者ほど、家族と離別、死別した時の自立が難しい」と指摘している。
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