2013/02/09
東京・江戸川区中学生の職場体験学習
中学生が実際に働いて学ぶ「職場体験学習」。ほとんどの公立中学校で実施されているが、多くが2日程度で、職場では「お客さん扱い」となってしまいがちだ。そんな中、5日間の実施で効果を上げている自治体がある。現場を取材した。 (宮本直子)
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東京都江戸川区の洋菓子店「パティスリーナガキタ」。店長の永喜多信行さん(40)が「溶けたチョコを手のひらにのせて…」とトリュフチョコの作り方を実演すると、中学生2人が真剣なまなざしで見入っていた。
1月下旬、同区の松江第5中の2年生が同店で職場体験した。小黒美希さん(14)は「最初は緊張で指示通りやるのが精いっぱい。3、4日すると少しは上達した」。将来パティシエになりたいという小野翔太君(14)も「慣れたのは3日目ぐらい。それで終わったら物足りなかったかも。後半になって、どうしたらうまくできるか考えられた」と話す。
昨年から職場体験を受け入れている永喜多さんは「1、2日だと単なる職場紹介。ある程度の日数があると、仕事を分かってもらえるのでは」と話す。
同区では2005年度から、全公立中の2年に5日間の職場体験をさせている。生徒に希望を聞き、受け入れ先となる事業所などに学校が連絡を取り、協力してもらっている。
生徒の5日間受け入れは、事業所には負担。それでも、協力事業所は05年度より約400カ所も増え、約1690カ所に。区教委事務局からは「地域の子どものために一肌脱いでくれている」と感謝の声が上がっている。
05年度に中学2年だった生徒は現在、21、2歳。区教委が「第1期生」を追跡調査したところ、保育園での職場体験をきっかけに保育系の職を志し、区内の幼稚園に就職したケースもあったという。区教委の担当者は「地域で職場体験した子どもが、将来地域の人材として活躍するような流れも期待できる」と話す。
都教委によると、都内の公立中の職場体験実施は05年度は5割ほどで、5日間はその約1割だった。都では「職場体験の5日間実施」を推奨していて、08年度には全公立中が職場体験を行い、5日間も3、4割と増えている。
職場体験に詳しい、早稲田大の三村隆男教授(キャリア教育)は「職場体験では『役割を果たした』と実感できることが大切。日数がより長い方が自信につながる」と指摘。地域との連携についても、「地域と学校の結び付きが強まるいいきっかけ。長く続けることで地域で子どもを育てる素地ができ、受け継がれる好循環が生まれる」と評価している。
◆5日間以上は
◆全国で2割弱
中学生の職場体験学習が全国に広まったきっかけは、1998年度に兵庫県が始めた「トライやる・ウィーク」とされる。同県は阪神大震災、神戸の連続児童殺傷事件を受け、心の教育を充実させようと、地域での体験型学習を重視。5日間、校外で職場体験やボランティア活動をさせるようにした。
それ以前も職場体験をさせる学校はあったが、1~2日間と短期間。5日間にすることで生徒が現場にある程度慣れ、他人の大人との接点から、職業観や人生観を持つきっかけになる体験となったという。それが「先進モデル」として評価された。
国立教育政策研究所によると、2011年度の公立中の職場体験実施率は97%。うち5日間以上なのは2割弱。都道府県別に公立校全校が5日間以上なのは兵庫、富山、滋賀の3件
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