2013/01/29
眼鏡枠作りで培った技術を生かし昨年4月、眼科手術用の医療器具生産に乗り出した鯖江市川去町の眼鏡メーカー「シャルマン」。今月末からは範囲を広げて脳外科用の剪刀(はさみ)の販売も始める予定で、国内最大の眼鏡枠産地・鯖江の新たなビジネスモデルとして、業界の期待が高まっている。 (古谷祥子)
長さ数ミリ、幅1、2ミリの刃が、脳患部を処置する。越前打刃物の技術を取り入れた刃先に、チタン製の持ち手。「使用した医師の方からは、切れ味が良く長く使えると好評です」と同社の岩堀一夫専務。一般的に使われるステンレス製の剪刀よりも軽量で、さびにくく磁性を帯びないのが特長だ。堀川馨会長は「持ち手は部位に合わせて異なるチタンを使い分け、微細なレーザー接合をしている。他ではまねできない技術です」と胸を張る。
2010年5月に、白内障手術の権威で鯖江市出身の清水公也北里大教授から、眼科手術用の器具の開発を依頼されたのが、医療分野進出への始まりだった。「25年の眼鏡枠作りで培ったチタン加工技術には自信があった。ひとつの新ビジネスが生まれるのではと思った」と堀川会長は振り返る。
眼鏡枠作りは、200~250の工程に分かれ、市内には各工程を専門とする中小企業が多い。一方同社は、金型作りから完成品まで一貫生産を手掛ける。その過程で使う機械や技術を、そのまま医療器具の生産にも転用できる利点があった。
国内トップの生産量を誇る鯖江産地も、最近では安価な中国産に押され、閉塞(へいそく)感が漂う。高級ブランドとのタイアップなどで堅調な実績を維持する同社も、2009年に新規事業開発室を設置し、新たな可能性を模索していた。
医療器具の生産に本腰を入れたことを受けて、堀川会長は「鯖江はチタン精密加工の世界最大産地。将来、産地全体で医療事業に参入するための先駆けとなれば」と力を込める。既に部品製造や加工の一部は、市内の数社に発注している。
商品は、国内専門商社を通じ医療機関などに販売。2015年度には20億円の販売を見込む。海外展開も視野に、堀川会長は「眼鏡枠の製造・販売を通じて設立した20カ国の現地法人を拠点に現地商社と関係をつくりたい」と先を見据える。
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